「大学で学んだ法律の知識を証明する資格が欲しいけど、国家資格は難易度高いしハードルが高そう」
そう考える人は多いのではないのでしょうか。
特に企業のコンプライアンスが重視されるこの時代、法律知識をもっていることは、将来的に就職・転職活動に有利に働くかもしれません。
そこで注目したい資格が法学検定です。
確かに、法学検定の難易度はどのくらいかや履歴書に書けるのかなど、様々な不安や疑問があると思います。
そこでこの記事では
・法学検定って難しいの?
・受験するメリットがある人って?
・法学検定で就職・転職は有利になる?
・法学検定の他にも法律系資格ってある?
という疑問を解決する情報をお伝えします。
目次
法学検定とは
法学検定は民間資格の一つで、公益財団法人日弁連法務研究財団と公益社団法人商事法務研究会が共同で組織した法学検定試験委員会が実施する、法学に関する学力を客観的に評価する検定試験です。
年に一度、11月頃に全国規模で実施されており、受験資格がなく誰でもチャレンジできるため、法学部在学・出身を問わず、法学を学ぶ学生や社会人など多くの人が受験をしています。
また、出題形式が多肢択一形式(4〜5択)で解答方式がマークシート方式であることなどから、国家資格に比べると挑戦しやすい資格であるといえます。
2021年度試験について
試験日 | 2021年11月28日(日)
出願受付期間: 願書郵送締切: *1:出願方法により異なります |
受験料
(税込) |
ベーシッ ク〈基礎〉コース …………4,400円
スタンダード〈中級〉コース …………6,600円 アドバンスト〈上級〉コース …………9,900円 ベーシック・スタンダードセット* …8,800円 スタンダード・アドバンストセット* …13,200円 *セット割引は2つのコースを同時に申し込んだ場合のみ適用されます |
会場 | 【一般会場】 札幌市、仙台市、東京都、愛知県、京都市、大阪府、岡山市、愛媛県、福岡市、沖縄県
【団体会場】 各団体等と法学検定試験委員会が協議のうえ指定した会場で実施されます |
出願方法 |
【個人申込】
出願書類(受験要項・願書)は9月上旬から大学生協購買部・主要書店等で配布予定。 原則として、全国11地区に設置する「一般会場」での受験となります。 |
【グループ申込(10名以上)】 ゼミや仲間同士での受験向け
グループの「申込責任者(受験者でも可)」を通して受験申手続をし、一括で出願する方法です。 グループ受験申込書の入手等の詳細については、法学検定試験公式ウェブサイトをご覧ください。 なお、受験会場は「一般会場」となります。 ◎グループ受験割引制度あり(受験料消費税分割引) |
|
【団体申込(20名以上)】 大学・企業単位での受験向け
大学や企業・団体等の「申込責任者(受験者は不可)」を通して受験申手続をし、一括で出願する方法です。 団体受験申込書の入手等の詳細については、法学検定試験公式ウェブサイトをご覧ください。 原則として、「団体会場」での受験となります。多くの場合は、団体申込をした大学が会場となります。 ◎団体割引あり(条件によって割引率が異なるため、事務局に問合せが必要) |
法学検定試験は年に1回の開催ではありますが、全国各地に受験会場があることや、出願方法の豊富さから、毎年多くの人が受験しています。
法学部のある大学の多くは団体受験の実施を行っており、受験料補助や試験対策講座の設置などの支援を行い、受験を後押ししている大学もあるようです。
法学検定の難易度は?
法学検定には
- ベーシック(基礎)コース
- スタンダード(中級)コース
- アドバンスト(上級)コース
の3つのコースがあり、コースの上位になるほど試験科目が増え、その分学習範囲も広くなるので、難易度は上がっていきます。
では、各コースの試験科目と合格率を見ていきましょう。
コース |
合格率 (2019年) |
試験科目 |
ベーシック(基礎)コース
(法学の初学者が知っておくべき基礎的なレベル) |
62.6% | 法学入門・憲法・民法・刑法 |
スタンダード(中級)コース
(法学を専門的に学習する者が修得すべきレベル) |
55.3% | 法学入門・憲法・民法・刑法に加え、
民事訴訟法、刑事訴訟法、商法、行政法の中から1科目を選択 |
アドバンスト(上級)コース
(法学を学ぶ者が目指すべき上級レベル) |
26.2% | 法学基礎論・憲法・民法・刑法に加え、
民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法から1科目、 労働法・倒産法・経済法・知的財産権から1科目を選択(合計2科目) |
試験科目だけを見ると、ベーシックコースでも法学の基本法が網羅された内容になっているため、「1番易しいレベルでも難しそう・・・」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、ベーシック、スタンダードコースの合格率をみても分かる通り、難易度はそれほど高くはありません。
それに法学検定はマークシート方式の試験のため、記述問題のある他の法律系資格試験と比べみても、難易度が比較的易しい資格試験です。
そして試験内容は、公式問題集から出題される割合が6〜7割と高いため、1ヶ月程度過去問や問題集でしっかり学習していれば十分合格可能です。
また、公式ツイッターでは、ベーシック・スタンダードコースの問題集の内容を掲載しています。
どんな試験内容なのか知りたい人は、ぜひチェックしてみてください。
下記の問いに○か×で答えなさい。
Bは,Aから賃借した物を,Aの承諾を得てCに賃貸した。この場合,Aは,Cに対して修繕義務を負わない。
(2020年基礎コース問題集 #民法 Q84”転貸借”より)
正解はこちら→https://t.co/mQq5ggk334#レッツ法検 #法検
— 【公式】法学検定試験 (@houken_since00) June 28, 2021
一方で、アドバンストコースの試験内容は行政書士レベルともいわれ、難易度が一気に上ります。
一定水準以上の体系的な法学の知識や理解力が求められ、なおかつ、公式問題集が存在せず出題内容の予測が立てにくいことからも、基礎から応用までコツコツと学習を積み上げていく必要があります。
3ヶ月〜半年の準備期間が必要となるでしょう。
アドバンストには問題集はありませんが、公式の過去問集が出ているため、学習の参考にしてみてはいかがでしょうか。
法学検定はどんな人におすすめ?
法律系の国家資格と比べて、民間資格である法学検定の社会的な知名度はまだ低い状況にあります。
また、受験者数は年々減少傾向になっており、法学検定が役に立つ人や有効に働く場面は限られていると考えられます。
ですが法学検定は
・初めて法学を学ぶ人、法学部の学生
・法曹界での活躍を目指す人
・公務員を目指す人
などにおすすめしたい資格です。
では、おすすめする理由をお話ししていきます。
初めて法学を学ぶ人、法学部の学生
法務検定は、公益財団法人日弁連法務研究財団と公益社団法人商事法務研究会が共同で組織した法学検定試験委員会が実施する検定試験です。
そのため、法学の各分野で活躍する研究者によって精選された質の高い問題が揃っているといわれています。
そのため、大学で学んだ知識の定着を確かめるものさしとして、法学初心者が検定合格を目標に法律を学習し理解するためのきっかけとして、法学検定を活用することができるでしょう。
法学部としてでしたら、法学検定の勉強がおすすめです。選択問題ですから初めての人でも勉強しやすく、2年時の司法コースの合格基準にも使われます
— Grace (@grace3_615) February 20, 2021
法曹界での活躍を目指す人
ベーシックコースやスタンダードコースは内容や難易度からみて、資格取得自体にあまり魅力は感じられないかもしれません。
しかし、最上位のアドバンストコースに合格すれば、法科大学院の入試で考慮される場合もあるなど、明確な目的をもつ人にとっては、検定取得のメリットもあります。
また、難易度の高い法律系国家資格の合格を目指す上で、土台づくりや腕試しの目的での受験は大いに意味があるといえるでしょう。
https://twitter.com/momoyama_univ/status/1052803853026906113
公務員を目指す人
公務員試験に出題される内容は、ほとんどが法律に関する問題です。
そのため、法学検定は公務員試験と試験内容が似ており、法学検定を公務員試験の模試代わりに利用する人も多いようです。
11月に法学検定(スタンダード)を受ける。
公務員試験の勉強の際、民法がどうしても苦手で途中で勉強を諦めてしまった。でもやっぱり実務において民法の知識は不可欠なので再度勉強する。
投資の勉強は好きだからやるけど法律の勉強は嫌いだからなかなか進まない…— ぽんた (@ponta0684) January 5, 2021
以上のように、法学検定をおすすめするのは、法律が直接的に関わる世界に身を置き、将来その分野で活躍したいという明確な目標をもっている人です。
資格取得そのものというよりは、試験勉強の過程で得る知識や理解が、先の学習や就職などに大いに役立つでしょう。
法学検定は履歴書に書ける?就職・転職には役立つ?
よりよい就職・転職先を手に入れるために、資格取得に励む人も多い世の中です。
時間もお金もかけて取得を目指すなら、きちんと役に立つ資格かどうかを見極めたいものですね。
結論から言うと、法学検定は履歴書に書ける資格です。
ただ、近年一般企業における採用や人事異動に際して、参考資料として法学検定取得を評価する企業は増えているものの、資格取得を必須条件としていたり資格手当がついたりするケースは少ないようです。
そうですね。現状では、法学検定は一般企業への就職・転職に大きなアドバンテージになる資格ではないといえます。
民間資格である法学検定は、国家資格である行政書士や司法書士とは異なり、取得によって独立や開業、特定の業界や部署などでの活躍が約束された資格ではありません。
また、法学検定は法律学の理解度を学問的観点から測る資格であり、法学全般における理論が問われます。
ビジネスパーソンとして知っておくべき法律知識に的を絞って学習したいという人は、より知名度の高いビジネス実務法務検定を視野に入れた方がよいかもしれません。
とはいうものの、企業コンプライアンスの重要性が叫ばれる昨今、各企業は社員一人ひとりの意識強化を重視しています。
そのような背景下、一定レベル以上の法律知識があることを客観的に証明できる本資格を有していることは、採用側の企業に良い印象を与えるという利点はあるでしょう。
法学検定の他にも法律系資格ってある?
ここまで読んで、一般企業への就職・転職を考えている人の中には、法学検定を選択肢から外した人もいるのではないでしょうか。
しかし、一般企業といえど、法務部や総務部など特定の部署においては、法律知識を有していることは重視されます。
その知識を客観的に証明するために、資格をもっていると安心ですよね。
知名度が高い法律系の資格として、
・ビジネス実務法務検定(民間資格)
・行政書士(国家資格)
・社会保険労務士(国家資格)
などが挙げられます。
それぞれどのような資格で、どんな場所で活かせるのか説明します。
ビジネス実務法務検定 (難易度 1級:難関 2・3級:普通)
法学検定と同じく民間資格の検定試験ですが、知名度は法学検定より圧倒的に高く、ビジネスシーン全般で求められる実務的な法学知識を有することを証明できる資格です。
この資格は、営業・販売・総務・人事など幅広い法務の知識が求められ、法務分野だけでなく多くの職種で活用可能です。
資格には1級から3級まであり、2級試験の合格者のみ1級の試験が受験可能になります。
2019年の第46回試験では、2級の受験者数が7,083人、合格者数が2,170人で、合格率は30.6%という結果になっています。
引用:マイナビAGENT
そのため、就職に役立つ法律資格を取得したい方はビジネス実務法務検定を受けると良いかと思います。
行政書士 (難易度 難関)
行政書士は、官公庁に提出する書類の作成やその手続き代行、事実証明や契約書の作成などが認められる国家資格です。
行政書士の仕事は多岐にわたり、上記の業務以外にも自動車登録・車庫証明申請書・各種法人設立申請、各種営業許認可申請書(建設業許可、廃棄物処理業、風俗営業)、入管申請書、帰化申請書などの仕事があり、非常に業務内容の幅が広いです。
2019年度の行政書士試験では、受験者数39,821人の内、合格者数は4,571人で合格率は11.5%という結果になっています。
引用:マイナビAGENT
行政書士は国家資格なので、難易度は非常に高いです。
なので行政書士レベルと言われる法学検定のアドバンストコースで法律に関する知識を十分に付けてから、行政書士に挑んでみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士 (難易度 難関)
社会保険や労働関連の法律の専門家として、企業の人事や労務管理に関わる人を社会保険労務士(社労士)といいます。
雇用や社会保険、労働関連の分野における唯一の国家資格であり、需要の高い仕事といわれています。
法務・人事関連の資格は特定の業種や職種を問わないことが多く、雇用者を抱えている企業ではどこでも必要とされます。
2019年度の社労士試験の受験者数は38,428人なのに対し、合格者数はわずか2,525人で、合格率は6.6%という結果になっています。
引用:マイナビAGENT
社会保険労務士は、同じ国家資格の行政書士より合格率が低く、合格できるのはほんの僅かとなっています。
合格するにはかなりの勉強と対策が必要となってくるため、法律全般の知識を学べる法学検定を受検してみるのも良いかと思います。
以上のように法律系の資格は、法学検定やビジネス実務法務検定のような民間資格から、将来的に独立開業につながる業務独占資格の国家資格まで様々な種類があります。
難易度も資格によって大きく異なるため、まずは難易度の優しい法学検定からチャレンジしてみるのもよいですね。
まとめ
法学検定について詳しく説明してきました。
まとめると、以下の通りです。
・ベーシック・スタンダードの難易度は普通、アドバンストは難関
・法学検定は法律を学んでいる人や、法曹界、公務員を目指す人などにおすすめ
・法学検定は就職・転職に役に立つケースは少ない
・法律系の国家資格を受けるために、法学検定を受検して勉強するのがオススメ
法学検定は、一般企業での就職を目指す人にとって、取得してから役に立つ場面は少ない可能性がありますが、受験のための学習を通して知識が増えるというメリットがあります。
また、採用や人事異動の参考資料として利用する企業が増えてきていることからも、資格を取得して損をはないでしょう。
どの資格にしても、自分が将来どのように働きたいのか、何のために資格取得を目指すのかという明確な目的をもち、取捨選択をすることが大切ですね。
法学検定があなたにとって必要な資格かどうか、判断する材料になれば幸いです。