皆さんは、ITサービスマネージャという資格を知っていますか?
ITサービスマネージャとは情報管理の運用・管理に関する専門能力を認定する国家資格です。
IT関係の仕事が増える今、就職や昇進、転職のために、資格取得を考える人も多いのではないでしょうか。
そんな中で、
「転職に有利な資格を取りたい」
「独学でも取れるのだろうか?」
「勉強のやり方が分からない」
など、疑問もあるかと思います。
そんな方のために、この記事では
・ITサービスマネージャについて
・試験概要
・難易度
・勉強法と参考資料
について、詳しく解説していきます。
目次
ITサービスマネージャとは?
ITサービスマネージャとは、冒頭でも書きましたが情報処理技術者の国家資格で、ITサービスマネージャ試験(SM)に合格することで取得できます。
ITについての高度で専門的な知識を持ち、ITサービスの計画立案、設計、提供、改善、これらの業務のための組織の活動を指揮、管理できる人材に与えられる資格です。つまりITサービスマネジメントを中心になって回すリーダー的存在の人に与えられる資格ということです。
試験は、独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)が行っており、他にもITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験などが同種の試験になります。
どんな人が取る資格なの?
ITサービスマネージャ試験はIT系の技術者なら誰でも受験することができます。なかでも下記のような人材を目指す人の受験が多いようです。
・情報システム全般の運用・保守の担当リーダー
・設計やプログラミングの開発担当リーダー
・職場のリーダー職、上流ポジションを目指す人
ITサービスマネージャ試験は、実際に仕事で運用や保守を担当しているエンジニアが多く受験しています。
また開発に携わっているエンジニアでも、運用や保守に関する知識を増やしより効率的に仕事ができるようになるため、受験する人が多いようです。
取得することで企業からの信頼を得ることができ、リーダー職を任されるなど、出世するきっかけにもなるでしょう。
ITサービスマネージャになると年収はどうなるの?
ITサービスマネージャの平均年収は530万円前後と言われています。これは一般サラリーマン平均年収454.5万円と比べると高い水準と言えるでしょう。
ちなみに同職種の中では特別高い、とは言えません。しかし、取得しておいて損はない資格です。
例えば、システムエンジニアで年収500万円、マネージャーで年収600万円、上位マネージャーで年収800万円などのデータがあり、つまりこれは、役職が上がるにつれて年収があがる見込みがある職業ということです。
また、高度情報処理技術者試験の国家資格であることから、企業からは非常に重宝されます。資格手当が支給される場合もあるので、安定した収入を確保するためにも役立つ資格だと思います。
ITサービスマネージャ試験(SM)について
前項で書いたように、ITサービスマネージャになるためには、試験に合格しなければならないということです。
ではそのITサービスマネージャ試験について、下記の順でもう少し詳しく解説していきます。
・試験日
・試験の流れと形式
・合格基準
・免除制度
試験日が例年とは違う?
ITサービスマネージャの試験は2009年から年1回秋期(10月第3日曜日)のみの開催となっていました。
しかし新型コロナウイルス(COVID-19)の影響などにより、2020年は予定されていた秋期試験が中止となりました。それを受けて2021年は春期試験として実施され、今後は春期試験に時期を変更して実施予定となっているようです。
最新の情報については情報処理推進機構(IPA)などでご確認ください。
これからのご時世、試験主催者、また受験者側についても臨機応変な対応が求められるようになることでしょう。チャンスを逃さないようにするためにも、日頃からしっかりと準備をして臨む必要があります。
試験の流れと形式
試験は午前Ⅰ・Ⅱ、午後Ⅰ・Ⅱの4つに分かれており、出題形式や問題数・解答数が異なります。
下の表は、それぞれの科目の試験時間・出題形式・出題数になります。
午前Ⅰ | 午前Ⅱ | 午後Ⅰ | 午後Ⅱ | |
試験時間 | 9:3010:20
(50分) |
10:5011:30
(40分) |
12:3014:00
(90分) |
14:3016:30
(120分) |
出題形式 | 選択式(四肢択一) | 選択式(四肢択一) | 記述式 | 論述式 |
解答数/出題数 | 30/30問 | 25/25問 | 2/3問 | 1/2問 |
午前Ⅰ・Ⅱは専門的知識を問われる内容となっており、選択式です。午後Ⅰ・Ⅱの記述式・論述式では知識のみならず、経験や、それを伝える文章力が必要になってきます。
また試験時間からも分かるように、一日を通しての試験になりますので、集中力・体力など身体のコンディションを整えておくことも大事です。
合格基準と採点方法
午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ試験は、60点以上で合格となります。午後Ⅱ(論述式)試験は、A〜Dの4段階で評価され、A判定のみ合格となります。
ITサービスマネージャ試験は採点の際、基準点に達しない科目があると、その時点で不合格となりその後の試験は採点されないというルールがあります。例えば午後Ⅰで60点を下回った場合、午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱは採点されない、ということです。
ですので、どの科目も満遍なく準備・勉強をして、確実に合格基準を満たす必要があるということになります。
免除制度を活用しよう
ITサービスマネージャーの試験には免除制度があり、この制度を利用することでその後2年間「午前Ⅰ試験」について試験が免除されます。
次のいずれかに該当する場合が免除の対象となります。
1.応用情報技術者試験合格
2.いずれかの高度試験か支援士試験に合格
・ITストラテジスト
・システムアーキテクト
・プロジェクトマネージャ
・ネットワークスペシャリスト
・データベーススペシャリスト
・エンベデッドシステムスペシャリスト
・システム監査技術者
・情報処理安全確保支援士
3.いずれかの高度試験か支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を得る
高度情報処理試験の午前Ⅰの試験については、内容が同じようなものになるため、一度合格するとその後2年以内は免除されるというわけです。
試験は長丁場なので、この制度を利用することで体力的・精神的にも負担の軽減になるでしょう。免除制度を利用して着実に合格に近づくのも、手段の1つですね。
ITサービスマネージャ試験の難易度
受ける人の知識や経験によって違いがあると思いますが、ITサービスマネージャ試験は情報処理技術者試験でも最上位のレベル4に分類され難易度はかなり高いと試験と言えるでしょう。
合格率は13〜14%前後になり、偏差値は68となっています。難関試験ではありますが、同試験と比べると同じくらいの合格率といえます。
試験の難易度が上がる理由としては、次の2つが主な要因ではないかと考えられます。
・出題内容が専門的で、高いレベルの知識や技能が求められる
・記述式・論述式は論理的な思考力・読解力・作文能力など複合な能力が必要
専門的な知識はもちろん、加えてリーダーとしての総合的な能力が必要になります。ですので、既にIT関係の仕事に従事している人であっても、論文に慣れていない人は難しいと感じるでしょう。
勉強方法、合格のコツ
未経験者と経験者では勉強法も異なるかもしれませんが、基本的にはインプットとアウトプットを徹底することです。ITサービスマネージャ試験の場合のインプットは、テキスト等を使って基本的な知識を記憶すること、アウトプットは過去問等を使って演習を繰り返し行うことです。
特に、未経験者や知識量に不足を感じる人は、インプットの時間を多く取りましょう。午前試験では知識量が得点に直結します。テキストの読み込みを通して知識を蓄えていきましょう。
逆に知識量には自信があるが論文に不慣れな人は、アウトプットで演習を繰り返し行い、問題の形式に慣れていく方法が効果的です。そして演習の中で気づいた弱点は、テキストで復習していくと良いでしょう。
演習量としては、最低でも過去3年分が目安になります。とくに過去問は、解くことで出題傾向を把握することにも繋がります。
演習で8割以上の達成を目指せば、本番にも落ち着いて臨むことができるでしょう。
記述式、論述式ののアウトプットは自分で見ても分からない、または間違いに気づかない場合があります。そんな時は、他の人に確認してもらうのがおすすめです。同じ試験を受ける仲間を作るなどして、文章同士の関係性が適切かどうかをチェックしてもらうといいでしょう。
独学で勉強する場合のコツは?
ITサービスマネージャ試験の難易度は高いですが、独学でも十分、合格可能です。しかし独学で勉強する場合は、勉強以外の面での課題も多いです。それは、スケジュール管理やモチベーションの維持です。
ITサービスマネージャ試験に合格するには、100~150時間程の勉強が必要と言われています。仕事の合間を縫っての勉強になれば、長い期間継続して勉強する必要があり、計画的な勉強が大事になってきます。
そのために、スケジュールはいつでも確認できるようにして、やるべき事を常に明確にしましょう。
また、長い勉強期間でもやる気がなくならないようにモチベーション維持の工夫もしましょう。これにはスケジュール管理とあわせて、短期間のノルマを設定することがおすすめです。毎日の目標点数を決めるなど、達成感があることで勉強も長続きします。
ITサービスマネージャ試験のオススメ参考書
では、最後におすすめのテキスト・参考書を、克服課題別に紹介していきます。まずは、自分の今のレベルを把握し、苦手な部分を明確にした上で、それに合わせた参考書を選ぶと良いでしょう。
午前科目、知識量に不安のある方
基本的な知識量に不安がある方には「情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ」がおすすめです。
午前Ⅰ・Ⅱでよく出る問題が厳選して掲載されているので、対策ができるます。問題演習中心で詳しい解説付きなので、類似問題にも対応できます。この一冊でもしっかりとやり込めば、午前対策はバッチリでしょう!
午後科目、論述式の解答に自信のない方
論文対策を徹底的に行いたい場合は、「ITサービスマネージャ合格論文の書き方・事例集第5版」がオススメです。
論文対策に特化した内容で、過去問やオリジナル問題・合格レベルの論文の作成方法があり、専門家による論文が多く掲載されているので、幅広い解答例を見ながら演習を行うことができます。
独学での対策をしたい方
独学での勉強におすすめのテキストは「情報処理教科書 ITサービスマネージャ」になります。
このテキストには合格のために必要な知識だけを厳選しているため、効率的に勉強できるでしょう。更に、午後Ⅱ試験の対策についても、充実した解説内容になっています。論文の作成方法・実際の構成例・添削付きの解答例等が掲載されているので、独学でもしっかりと対策ができる一冊です。
まとめ
いかがでしたか?ITサービスマネージャについて、またITサービスマネージャ試験についての疑問は解消されたでしょうか?
今回の記事をまとめると
・ITサービスマネージャとは情報処理技術者の国家資格
・業務での役割は、専門的な知識を持ってITサービスマネジメントを中心になって回すこと
・難易度は高いが、独学での取得も可能
・勉強法はインプット・アウトプットが基本
・参考書は自分のレベルや勉強法に合わせて選ぶ
という内容でした。
この記事でITサービスマネージャへの理解が深まり、試験対策に役立てば幸いです。