企業経営にITの活用が欠かせない時代となっている昨今、ITストラテジストは注目されている資格の一つといえるでしょう。
この資格を持つ人は、企業の中で経営に携わる重要な存在となります。
そんなITストラテジストの資格を取得して、自分の今後に役立てたいと考える人も多いのではないでしょうか。
そうなると、
「試験が難しいってどれくらい?」
「勉強時間はどれだけ必要?」
「意味ないって聞くけど年収は上がるの?」
などの疑問が出てくるかと思います。
そこで、この記事では
・どのような資格なのか
・試験の難易度
・合格するために必要な勉強時間や未経験の可能性
・意味がない?年収はどれくらいになるのか
などについて解説していきます。
ITストラテジストを目指す上での参考になりますので、ぜひご覧ください。
目次
ITストラテジストとはどんな資格?
ITストラテジスト試験は、情報処理技術者試験の中の高度情報技術者試験の一つです。
ITストラテジストの役割
ストラテジスト(英:strategist)は投資などの戦略家を意味します。
ITストラテジストは、ITを用いて経営戦略を立てる専門家ということになります。
IPA(情報処理推進機構)では、対象者像を以下のように挙げています。
-対象者像-
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者
引用:IPA
「IoT」とは、インターネットを介したセンサーと通信機能を持ったモノのことを言います
ITストラテジストは、超上流工程において、事業計画・システム化計画の立案や実行を主導するという役割があります。
引用:経済産業省
コンサルティング企業などでは、ITの専門家としてだけではなく企業経営にも精通している者として、経営戦略や製品・サービスの企画など、経営のさまざまなことについてのアドバイスが求められる立場となります。
一般企業においては、経営方針を決める際に中心的な存在となり、情報システム部門だとCIOやCTOなどの役職を任され、情報システム刷新などの改革を求めらるようになります。
ITストラテジスト試験の概要
受験資格 | 年齢、学歴などに制限はなく誰でも受験可能 |
試験時間 | 午前Ⅰ:50分
午前Ⅱ:40分 午後Ⅰ:90分 午後Ⅱ:120分 |
出題形式 | 午前Ⅰ・Ⅱ:四肢択一式
午後Ⅰ:記述式 午後Ⅱ:論述式 |
出題数 | 午前Ⅰ:30問
午前Ⅱ:25問 午後Ⅰ:4問中2問選択 午後Ⅱ:3問中1問選択 |
出題範囲 | 午前Ⅰ:テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系
午前Ⅱ:テクノロジ系(技術要素-セキュリティ) ストラテジ系(システム戦略、経営戦略、企業と法務) 午後Ⅰ・Ⅱ: 業種ごとの事業特性を反映し情報技術を活用した事業戦略の策定又は支援に関すること 業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること 業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること 事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること 組込みシステムの企画、開発、サポート及び保守計画の策定・推進に関すること |
合格基準 | 午前Ⅰ・Ⅱ・午後Ⅰ:100点満点中、60点以上
午後Ⅱ:ランクA~Dの中、ランクA |
試験日程 | 10月 |
願書受付 | 7~8月 |
受験料 | 5700円(税込) |
受験地 | 全国主要都市 |
ITストラテジスト試験はシステムアナリスト試験の後継資格となっています。
システムアナリスト試験を主体として、上級システムアドミニストレータ試験の範囲を吸収したものが、現在のITストラテジスト試験です。
メモ
・1994年~2008年 システムアナリスト試験
・1996年~2008年 上級システムアドミニストレータ試験
・2009年~ ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は難しい?難易度は?
結論から言って、ITストラテジスト試験は偏差値71相当となっており、難易度は超難関と言えるでしょう。
現在の情報処理技術者試験はレベル1~4まであり、ITストラテジスト試験は最高位のレベル4となっています。
しかし、前身資格であるシステムアナリスト試験は、当時スキルレベル5とされており、高度情報処理技術者試験(高度試験)の中でも最終到達地点として位置付けられていました。
そのため、後継資格であるITストラテジスト試験も、高度試験の中では最高峰の区分と言われています。
合格率は毎年14~15%程度です。
試験合格のために必要な勉強時間の目安は?
勉強時間に関しては、個人の能力の違いの他に、もともとどれほどのスペックがあったかによっても変わってきます。
ITストラテジストの合格に必要な勉強時間は、効率的に効果的な学習をする前提で、そのひとが応用情報に合格するのにかかった勉強時間の、50~100倍ぐらい。
— 上白沢しとりー@マヨネーズ係 (@ndxbn) October 22, 2012
明日はITストラテジストの試験…。対策2か月前からって時点でだいぶナメてるけど初受験なのでどれだけ戦えるか試してみる…!ちなみに勉強時間を大体でメモってたんだけど、80hくらいだった。
— mo5% (@jaries_005) October 17, 2015
なんにせよ、難易度の高い試験なので、それ相応の勉強時間が必要となってくるでしょう。
合格者の体験記などによれば、だいたい100~150時間は勉強している方が多いです。
中には300時間や500時間、そして1500時間も勉強して合格したという人もいました。
また、試験勉強に時間を掛けるだけでなく、普段から新聞や経営情報関連の雑誌に目を通し、新しい技術や製品の販売戦略についての情報収集をすることも、合格するために必要なことと言えるでしょう。
未経験でも合格可能?
ITストラテジスト試験に受験資格は特に必要なく、誰でも受けることができる試験で、合格者の最年少記録は18歳となっています。
なので、能力や勉強のやり方次第では、未経験者であっても合格不可能というわけではありません。
しかし、前述してきた通りとても難易度の高い試験です。
受験者はほとんどが実務経験者であるにも関わらず、合格率は15%程度なので、未経験者が合格するのはかなりハードルが高いと言えます。
「ITストラテジスト試験なんて、誰でも受かりますよ~」なんてヘラヘラ謙遜してはいけない。何故なら、皆さん働きながら勉強時間を捻出しており、ベテランでも簡単には受からん。合格者の平均年齢39歳。
— ひでさん (HIDESAN) (@deltaforceJP) February 1, 2017
ITストラテジスト試験は、他の資格に比べて受験者の年齢層が高くなっており、業界の中でも特に経験豊富な実力者が受験しています。
合格するためには、ITと経営のどちらにも精通していることが求められるので、机上の学習だけではなかなか厳しいでしょう。
それでももし、実務経験なしでITストラテジストを目指すとしたら、まずは知識のベース作りをすることが重要になってきます。
ITストラテジスト試験を受ける前に、他の情報処理技術者試験や高度試験の受験と合格を目指しましょう。
ITストラテジストは意味ない?年収はどれくらいになるの?
ITストラテジストの平均年収は670万円程度となっています。
これは、他のIT系国家資格やIT系エンジニアの中でもトップクラスです。
ITストラテジストの求人例として、ある外資系保険会社では年収600~950万円、日系グローバルメーカーでは年収~850万円となっていました。
20代と年齢も若く経験が少ない場合などであれば、年収は400~600万円程度となりますが、経験年数や実績が増えると年収はより高くなっていきます。
ITコンサルタントやCIOなどの立場になってくると、年収は800~1,500万円程度となるのが一般的です。
このように、ITストラテジストは、コンサルティング企業だけでなく、一般企業に就職した場合も執行役員などの高い役職として迎えられることがあり、高収入となることが期待できます。
また、ITストラテジストは、厚生労働大臣により「専門的知識等を有する労働者」に指定されている、IT系の中では唯一の資格となっています。
労働基準法で特別扱いの対象となることから、各企業では、この資格を取得した社員に高い褒賞金を出すところも多く、その褒賞金が100万円を超える企業もあるほどです。
まとめ
ITストラテジストの概要や難易度などについて解説してきましが、いかがでしたでしょうか?
・ITストラテジストは、経営企画や最高情報責任者などの幹部候補、ITコンサルタントなどの立場になる者を想定した日本の国家資格
・試験の偏差値は71相当で、超難関
・合格するための勉強時間の目安は100~150時間以上
・平均年収は670万円程度
経営環境が常に変化する現代では、自社だけではなく、外部の変化も正確に読み取り、経営に反映していくという能力がとても重要になってきています。
そんな中、経営とITに精通したITストラテジストは、将来的にもさらにニーズが高まっていくことが予想されます。
資格を取得するためには並大抵の努力では難しいですが、目指す価値は大いにある資格と言えるでしょう。
ITストラテジストが気になっていた方にとって参考になる記事となれば幸いです。