自身のスキルアップのためや、仕事の都合などで「土木施工管理技士2級」の資格取得を目指そうとした時、
「そもそも自分は受験資格あるかな?」
「どれぐらい難しいのかな?」
「独学でも受かるかな?」
など、様々な疑問が浮かんでくると思います。
そこで今回の記事では、
「土木施工管理技士」ってどんな資格?
資格取得の難易度はどの程度?
独学でも受かる?受からない?
について、詳しく解説していきますので、資格取得を目指す方の参考になればと思います!
目次
土木施工管理技士とはどんな資格?
いくつかある施工管理技士の国家資格のうちの1つ。
道路や橋、トンネルに河川など私達の生活に欠かせない「ライフライン」の基盤整理を中心とした土木工事全般の施工管理を行い、土木建設の場で活躍する言わば「土木施工のスペシャリスト」のことです。
土木施工管理技士の”1級”と”2級”の違い
この資格には、1級と2級があります。
1級はすべての土木工事で、作業工程ごとの責任者である「主任技術者」と現場全体を指揮する「監理技術者」の両方に専任されることができます。
また、あらゆる土木工事の責任者として、施工管理や安全管理の業務に従事することもできます。
一方、2級は資格が「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の3種類に分かれています。
資格試験も3種類に分かれているため、合格したその専門分野において、作業工程ごとの責任者である「主任技術者」として施工管理を行うことができます。
工事の規模が大きくなると「監理技術者」を配置する必要があり、その「監理技術者」は1級の資格保持者でないと名乗ることができません。
簡単にいうと、
1級は大きな土木工事の施工管理ができる
2級は比較的小規模な土木工事の施工ができる
と覚えておくとわかりやすいかもしれませんね。
土木施工管理技士2級の受験資格はどうなっている?
資格取得には学科試験・実地試験の両方に合格する必要があります。
「学科試験・実地試験を同時に受験する」以外にも、実務経験年数が足りない場合は「学科試験のみを受験する」や、学科試験が免除される場合は「実地試験のみを受験する」など、部分的に受験することも可能です。
受ける試験によって受験資格が異なりますので、それぞれのパターンごとの受験資格について細かく解説していきます。
1.学科試験のみを受験する場合(実務経験年数が足りない場合)
2.実地試験のみを受験する場合(学科試験が免除される場合)
3.学科試験・実地試験を同時に受験する場合
※実地試験を受験するには、実務経験が必要になりますのでご注意ください。
まずは、「1.学科試験のみを受験する場合」です。
この場合の受験資格は、受験年度中における年齢が17歳以上の方となります。
また、実務経験年数が足りず、実地試験が受けられない場合でもこちらの受験は可能です。
続いて、「2.実地試験のみを受験する場合」の受験資格はこの2つに分かれます。
・当年度の2級土木施工管理技術検定・学科試験の受験者(ただし、「学科試験のみ受験者」を除く)
・学科試験免除者
となります。
学科試験免除者とは、下記の1)~9)に該当する方を指します。
1)令和元年度2級土木施工管理技術検定「学科・実地試験」の学科試験合格者
2)平成29年度以降の学科試験のみ合格者で、2級土木施工管理技術検定「学科・実地試験」の受験資格を有する者
3)技術士法による第二次試験で以下の技術部門に合格した方のうち、2級土木施工管理技術検定「学科・実地試験」の受験資格を有する者
①建設部門
②上下水道部門
③農業部門(選択科目を農業土木とするものに限る)
④森林部門(選択科目を森林土木とするものに限る)
⑤水産部門(選択科目を水産土木とするものに限る)
⑥総合技術監理部門(選択科目を建設部門もしくは上下水道部門、「農業土木」、「森林土木」または「水産土木」とするものに限る)
ここからは学歴ごとに区分されています。
4)大学
①大学の指定学科を卒業後1年以内に平成27年度までの2級土木施工管理技術検定の学科試験に合格している
②大学卒業後4年以内に行われる2級土木施工管理技術検定の実地試験を受験しようとする
③土木施工管理に関して1年以上の実務経験を有する
①~③をすべて満たす方は、卒業後4年以内に行われる連続する2回の学科試験が免除
5)短期大学または高等専門学校
①短期大学または高等専門学校の指定学科を卒業後2年以内に平成27年度までの2級土木施工管理技術検定の学科試験に合格している
②短期大学または高等専門学校卒業後5年以内に行われる2級土木施工管理技術検定の実地試験を受験しようとする
③土木施工管理に関して2年以上の実務経験を有する
①~③をすべて満たす方は、卒業後5年以内に行われる連続する2回の学科試験が免除
6)短期大学または高等専門学校卒業後、大学の指定学科へ進学し卒業した方の場合
①短期大学または高等専門学校の卒業後2年以内に平成27年度までの2級土木施工管理技術検定の学科試験に合格している
②短期大学または高等専門学校卒業後6年以内に行われる2級土木施工管理技術検定の実地試験を受験しようとする
※短期大学または高等専門学校、大学において指定学科を修めて卒業していること
③土木施工管理に関して1年以上の実務経験を有する
①~③をすべて満たす方は、卒業後6年以内に行われる連続する2回の学科試験が免除
7)高等学校または中等教育学校
①高等学校または中等教育学校の指定学科を卒業後3年以内に平成27年度までの2級土木施工管理技術検定の学科試験に合格している
②高等学校または中等教育学校卒業後6年以内に行われる2級土木施工管理技術検定の実地試験を受験しようとする
③土木施工管理に関して3年以上の実務経験を有する
①~③をすべて満たす方は、卒業後6年以内に行われる連続する2回の学科試験が免除
8)高等学校または中等教育学校卒業後、短期大学または高等専門学校の指定学科へ進学し卒業した方の場合
①高等学校または中等教育学校の指定学科を卒業後、平成27年度までの2級土木施工管理技術検定の学科試験に合格している
②高等学校または中等教育学校卒業後7年以内に行われる2級土木施工管理技術検定の実地試験を受験しようとする
※高等学校または中等教育学校、短期大学、専門学校(5年制)において指定学科を修めて卒業していること
③土木施工管理に関して2年以上の実務経験を有する
①~③をすべて満たす方は、卒業後7年以内に行われる連続する2回の学科試験が免除
9)高等学校または中等教育学校卒業後、大学の指定学科へ進学し卒業した方の場合
①高等学校または中等教育学校の指定学科を卒業後、平成27年度までの2級土木施工管理技術検定の学科試験に合格している
②高等学校または中等教育学校卒業後8年以内に行われる2級土木施工管理技術検定の実地試験を受験しようとする
※高等学校または中等教育学校、大学において指定学科を修めて卒業していること
③土木施工管理に関して1年以上の実務経験を有する
①~③をすべて満たす方は、卒業後8年以内に行われる連続する2回の学科試験が免除
※指定学科とは、土木工学・都市工学・衛生工学・交通工学及び建築学に関する学科のことです。
最後は、「3.学科試験・実地試験を同時に受験する場合」の受験資格です。
学歴によって実務経験年数が異なります。
学歴 | 実務経験年数 | |
指定学科卒業後 | 指定学科以外卒業後 | |
大学
専門学校「高度専門士」 |
1年以上 | 1年6ヶ月以上 |
短期大学
高等専門学校 専門学校「専門士」 |
2年以上 | 3年以上 |
高等学校
中等教育学校 専門学校(「高度専門士」「専門士」を除く) |
3年以上 | 4年6ヶ月以上(※) |
その他 | 8年以上 |
※高等学校の指定学科以外を卒業した者には、高等学校卒業程度認定試験規則(平成17年文部科学省令第1号)による試験、旧大学入学資格検定規程(昭和26年文部省令第13号)による検定、旧専門学校入学者検定規程(大正13年文部省令第22号)による検定又は旧高等学校高等科入学資格試験規程(大正8年文部省令第9号)による試験に合格した者を含む
となります。
実地試験は実務経験がないと受験することができないので、忘れずに確認しておきましょう。
続いては、この資格の難易度について解説します。
土木施工管理技士2級の難易度はどれぐらい?
学科試験・実地試験ともに合格基準は「60%以上」と言われています。
その試験概要は、
学科試験:4択のマークシート
実地試験:記述式
ここだけ聞くと「そこまで難易度高くなさそう!」というイメージを持つと思いますが、そうでもないんです。
まず、学科試験。
こちらは「4択のマークシート」という点からも難易度が少し低め。
過去問などを中心に繰り返し勉強していけば合格することができると思います。
問題は、「実地試験」です。
実技の試験と間違われることがありますが、基本的にすべて回答は「記述式」。
中でも、自分がこれまでに担当した土木工事における現場施工管理の経験を記述する「経験記述」がかなりの難関!
実際に自分が経験したこと書くだけでしょ?」と思われますが、文章表現力が必要となるため、過去問やテキストの丸暗記だけでどうにかなるものではありません。
落ち着いて書けるように、実際に何度も書いては、文章を読んでみて・・・と記述に慣れておくことも大事です。
あとは、「文章の型」を決めてしまうのもいいかもしれません。
そうすれば、あまり悩むことなく文章を書くことができると思います。
<おすすめの型>
[特に留意した技術的課題]
課題:本件工事には~~という事情があった。そのため、●●が課題であった。
[検討した項目と検討理由・内容]
検討項目1:▲▲
~という理由で、~~することを検討した。
検討項目2:▲▲
~~という理由で、~することを検討した。
[現場で実施した対応処置とその評価]
対応処置1:現場では~を実施した。その結果、~~となったので、××と評価できる。
対応処置2:現場では~~を実施した。その結果、~となったので、・・・と評価できる。
こちらは、あくまで参考の型になるので、自分が書きやすい型を作っておくといいかもしれませんね。
独学でも受かる?
もちろん独学で合格することはできますが、約400時間ほどの勉強時間が必要ともいわれています。
過去問などを使い、自分のレベルにあった勉強計画をたてて、試験日に向けてきちんと勉強計画を立てることが大事です。
過去問って重要?
土木施工管理技士の試験には、<必須問題>と<選択問題>があります。
<選択問題>とは、出題される問題の中から自分の得意な問題・解けそうな問題を選んで回答できるというもの。
過去問などでどこを重点的に勉強すればいいか研究し、そこを集中して勉強すれば点数を稼ぐことができると思います。
記述式でも過去問は参考になるの?
自分の経験した体験を記述するので、もちろんその答えは1人1人違いますが、限られた字数内で答えるので、当然模範解答もあります。
実地試験の過去問でも色々な問題を解いておくとどんな問題でも答えやすくなると思いますよ。
勉強すると同時に、自分が行った工事の中で答えに使えそうなものをピックアップしておくことも忘れずに!
あとは、自分で書いて読むだけではどこが悪いところかなどもわかりにくいので、添削をしてもらえる人も見つけておきましょう。
ただ、過去問を勉強しすぎて、本番で同じような問題が出たからといって、模範解答をそのまま書くようなことはしないでくださいね。
実際に独学で受けた方の声
独学で大丈夫と言われてもやっぱり不安・・・という方のために、実際に受けた方の声を集めてみました!
受かりやすい方法はとりあえずこつこつ勉強すること。
実地については、あなたが仕事をしてきた中で「品質・安全・工程管理・環境・コスト」に関してどのような点を問題点として考えてそれを解決してきたかなので、とにかく、一つの現場を思い出して小さな事でもいいので、それぞれたくさん書き出してみましょう。書いてみることが大切!
簡素に箇条書きのように書けるようになればきっと大丈夫。
10年分の過去問は解いた方が良いかと思います。
自分に合う参考書を見つけるのも重要!
参考資料を元に自分なりにアレンジして、あとは現場経験を全面に出して書いた方が良いと思います。実際の試験には、何パターンか覚えて、あせらず記述できるようにしてみてください。
過去問も大事ですが、やはり記述式の「実地試験」についてはとにかく「書いてみる」ことが一番の勉強法のようですね。
お勧めのテキスト&問題集
ここでは3つのテキスト・問題集をご紹介します!
イラストを使っていたり、1冊だけで合格を目指せるものなどがあるので、ぜひ参考にしてみてください。
2020年版 2級土木施工 学科&実地試験 徹底図解テキスト
出題範囲の分野を細分化し、各分野の学習ポイントをイラストや図表を使って丁寧に解説されています。
ナツメ社:2020年版 2級土木施工 学科&実地試験 徹底図解テキスト
建築土木教科書 2級土木施工管理技士 学科試験・実地試験 合格ガイド
学科/実地試験の両方をカバーした、「1冊だけ」で試験合格を目指せるテキスト。
過去8年の出題傾向を徹底的に分析!専門用語についてはやさしく丁寧に解説されているので、初学者でも安心して学習できますよ。
翔泳社:建築土木教科書 2級土木施工管理技士 学科試験・実地試験 合格ガイド
直前突破!2級土木施工管理 学科・実地問題集
最新の出題問題を整理・分類し、必要最小限の80項目に厳選!
実地試験対策として、記述解答例が掲載されていてどのように書けば良いかも解説されています。
株式会社 弘文社:直前突破!2級土木施工管理 学科・実地問題集
過去問やインターネット上でも公開されていることもあるので、自分にあったものを探してみるのもいいかもしれません。
また、独学の勉強に行き詰ったら、様々な会社が主催している講習会に参加して、プロ講師の指導を受けるのも1つの手ですよ!
年収はどれぐらい?
大体の年収ボリュームは300万~500万円程度で、平均400万円ほど。
年齢や勤続年数、会社の規模や仕事内容、さらに1級・2級の資格内容によっても年収は変わってきます。
年収アップを目指すには?
年収を上げるためにできることは2つあります!
1.とにかく現場経験を積むこと!
現場を指揮したり職人をまとめたりするためには、やはり知識や技術が必要となります。
そのためには、まず現場で経験することが一番大事!
さらに、資格を取るうえでも実務経験は必須。
2級の資格を取るためには最大8年以上、1級の資格となると最大15年以上の実務経験が必要となります。
現場を経験することは資格取得に必要なのはもちろんですが、様々な経験を積めば現場で働く職人からの信頼や会社からの評価も上がり、給与アップの交渉もしやすくなるかもしれませんよ。
初めは年収が少なくても「未来への投資!」と思いながら、頑張りましょう!
2.1級取得を目指す
1.で説明したとおり、経験を積んでいけば給料が上がる可能性は高くなりますが、やはり1級取得をするほうが年収アップが見込めそうです。
1級になれば2級に比べてできることも増えますし、会社によっては役職手当や資格手当などが支給されることもあります。
手当が付けば、毎月の給料も増える→当然年収アップが見込めます。
年収アップと同時に、自分のスキルアップにもなるので、1級取得を目指してみるのもいいかもしれません。
まとめ
今回の記事をまとめると・・・
・土木施工管理技士とは、土木建設の場で活躍する「土木施工のスペシャリスト」のこと
・資格取得の難易度は”中”程度だが、そんなに簡単には合格できない
・勉強計画をきちんとたて、ひたすら過去問と記述を勉強すれば独学でも受かる
・年収は平均400万円ほどだが、経験を積むことや1級取得など更なる資格取得などでアップする可能性もある
ということがわかったかと思います。
近年の合格率は学科試験は60%以上、実地試験は30%以上と学科は合格できても実地でなかなか合格できない人もいるようです。
合格のカギは、過去問で苦手問題をなくすことと、経験記述で落ち着いてわかりやすい文章で書けるよう何度も記述練習を行うことだと思います。
更新制度のない資格なので、永久的に資格を保持できるのも魅力。
建設業界で働き続けるなら取っておいて損はありませんので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。