資格はいるの?難しい?
実は、小動物看護士は、制度改革真っ最中の資格・職業なので、注意が必要です。
看護士と言えば、人気が高く、やりがいのある職業のひとつ。
「小動物看護士」はどうでしょうか。
この記事では、以下のことをご説明します。
小動物看護士とは?どんな仕事?
資格は必要?
資格の難易度や合格率は?
小動物看護士の給料はどれくらい?
それでは、順に見ていきましょう。
小動物看護士とは?どんな仕事?
「小動物」とは、たいていイヌやネコ、またそれより小さい動物のことを指します。
小動物看護士とは、いわゆる「ペットの看護士さん」ということです。
呼び方は、動物看護士やペット看護士、漢字も看護「師」と表記したりなどいろいろありますが、正式名称の決まりはないので、どの言葉も同じと考えてよいでしょう。
人間の世界の看護士は多くの人がすぐにイメージできると思いますが、小動物看護士はどうでしょうか。
基本的には、人間の世界の看護士と同じで、獣医のサポートをするのが小動物看護士です。
代表的な仕事を例にあげると、以下のようなことがあります。
・診療サポート(例:保定※、手術の補助)
・受付やカルテ管理
・動物のお世話(例:グルーミング、体を洗う)
・衛生管理(例:清掃、糞尿の処理) など
※保定…診察中、動物が動かないように、体をおさえておくこと
直接動物に触れる仕事が多いので、動物が好きな人に向いている職業であることは、言わずもがなです。
また、動きまわる動物のお世話をしたり、入院や宿泊を伴う施設で働く場合は夜勤がありますので、体力が必要な職業であるとも言えます。
小動物看護士になるには、資格が必要?
小動物看護士として働く場合、資格は不要です。
正確には、「現時点では不要」という言い方が正しいでしょうか。
2019年6月に、愛玩動物看護師法という法律が成立、公布されました。
公布から3年以内に施行され、「愛玩動物看護師」という国家資格が新設されます。
国家資格が新設されると、この資格を持っていない人は看護士を名乗ることができません。
看護士としての仕事をすることもできません。
今、小動物看護士の世界は変革期にあります。
背景には、看護士という専門的で重要な職業にもかかわらず、今まで資格が不要であったということが言えるでしょう。
小動物看護士の資格は、今までも複数あるにはあったのですが、
どれも民間資格で、認定機関も違うためにレベルや勉強内容が異なったり、名称も微妙に違ったりで、わかりにくい状況でした。
しかし、それでは「実際に医療を受けるペットや飼い主さんに不利益」、「サポートを受ける獣医も困る」ということで、
長い間、小動物看護士の資格統一化、国家資格化が叫ばれていました。
それが、ようやく現実に実を結びつつあります。
日本はペット大国でありながら、小動物看護士の資格法整備が遅れをとっていました。
しかし今後は、諸外国にならぶほどの獣医療環境の改善と、小動物看護士の地位の確立が期待されています。
どんな資格がある?難易度や合格率は?
小動物看護士の資格が複数あることは、ご説明した通りです。
ここでは、具体的にどんな資格があるのか、その種類や難易度についてご説明します。
愛玩動物看護師
愛玩動物看護師法が公布されてまだ日が浅いため、「国家試験がどんな試験になるのか」については、まだ確定していません。
現時点、受験資格については発表されています。
国家試験を受けるためには、指定の課程を修了できる大学や専門学校で学ぶ必要が出てきそうです。
独学や民間の通信教育などで勉強しても、試験は受けられないということですね。
すでに小動物看護士として働いている人については、特例措置があるので安心です。
実務経験5年以上の人について、講習会を受けて予備試験に通過することで、試験を受けられるようになります。
将来的に「ペットの看護士として働きたい!」と考えている方は、この資格が必須になりますので、今後の発表を逐一チェックする必要がありますね。
認定動物看護師
国家資格がまだ存在していない現時点、一番信頼を置かれている資格がこの「認定動物看護師」です。
いろんな協会がそれぞれに小動物看護師の資格を提供している状況が問題視され、
国家資格ができることを見据えて、いくつかの団体が統一する形で「動物看護師統一認定機構」という団体が2011年に発足しました。
認定動物看護士は、その新しい団体が運営している資格です。
試験の概要
受験資格 | 1.動物看護師統一認定機構が推奨するコアカリキュラムに基づいた「動物看護学」の課程を修了できる学校を卒業したもの。卒業見込みがあるもの。 2.動物看護師統一認定機構が受験資格を個別に認めたもの。 |
試験日 | 年に1回(例年3月に実施) |
試験会場 | 札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、福岡、那覇 |
受験料 | 15,000円(税別) |
試験構成 | ・一般問題:90問、五肢択一マークシート(100分) ・実地問題:30問、五肢択一マークシート(40分) |
難易度と合格率
難易度については、比較的易しいと言えるようで、以下のような口コミが多く見受けられました。
動物の看護という医療の専門分野なので、学ぶ知識は簡単なものではないが、学校で教えてくれる分野から出題されるため、地道に勉強すれば十分合格できる。
気になる合格率は、毎年85%前後と高い水準で推移しています。
試験の合格ラインは、残念ながら正式な発表はされていないようです。
「正答率は60%以上、平均点は約7割」といった情報が見当たりましたので、ウワサ程度に頭に止めておけば、安心材料になるかもしれません。
何にせよ、合格への近道は、
・学校の勉強を復習する
・過去問や練習問題を繰り返し解く
この2つが効率的な勉強法と言えそうです。
動物看護師統一認定機構の公式ホームページに、過去一年分の過去問が掲示されています。
試験前には、必ず時間を計って、できれば何度か通しでやって、出題形式に慣れておくことをおすすめします。
最近では、動物病院の看護士求人に、この認定動物看護師資格を必要資格に掲げているところもあります。
すぐに小動物看護士として働くために、取り急ぎ資格を取るのであれば、この資格がおすすめです。
すでに卒業して働いている方も、受験資格を得る方法があるので、嬉しいですね!
その他の小動物看護士
ここでは、代表的な5つの民間資格について解説します。
どの資格も受験するには、協会が認定した学校で一定の課程を修了するか、協会指定の通信教育を修了する必要があります。
① | AHTアニマル・ヘルス・テクニシャン【動物衛生看護師】 (日本動物衛生看護師協会) |
動物看護の一般知識、技能知識だけでなく、動物に関わる法規制や動物病院での実務まで学ぶことができる。 ◆受験資格:認定校にて、2年以上の課程を修了したもの (また、同等の学修・実務経験を持つ20歳以上のもの) |
② | 小動物看護士 (日本ペット技能検定協会) |
動物病院で獣医師をサポートするための知識や技能を習得する。その他、美容・しつけ・トレーニングなど、ペットビジネスに必要な学習がそろっている。 ◆受験資格:指定カリキュラムを修了したもの |
③ | 公認動物看護師 (全日本動物専門教育協会) |
動物病院で活躍することを想定し、幅広い専門知識と柔軟迅速に対応できる技術を習得する。現場で大切なコミュニケーション能力にも重点をおいている。 ◆受験資格:認定校にて、1~3年の課程を修了したもの |
④ | 動物看護士 (日本キャリア教育技能検定協会) |
解剖学、生理学などの知識から、看護士としての実務について、検査や手術などの技術について学ぶことができる。 ◆認定通信講座:日本ケンネルカレッジ |
⑤ | ペット看護士 (日本能力開発推進協会) |
イヌとネコの特徴や性格について、また、健康管理・応急処置・しつけやグルーミングなどについて学ぶ。 ◆認定通信講座:資格のキャリカレ |
これらの資格を取得したという証しと、資格のために勉強した知識はあなたの財産です。
看護士の国家資格が誕生することで、獣医師・看護士・その他スタッフといった風に、立場のすみ分けは進むでしょう。
しかし、民間資格も資格は資格。
資格取得のために勉強した知識は、どこかのタイミングで必ずあなたの役に立ってくれるはずです。
通学せずとも、リーズナブルな通信教育で取得できる資格もあるので、
自分のペットのために、またはペット業界で働く自分の知識の幅を広げるために、といった理由で資格を目指すのもおすすめです。
小動物看護士の給料は?
小動物看護士の給料は、月給約16万円~、年収でいうと約200万円~という求人が多いようです。
人間の看護士の収入は、日本看護協会の発表によると、初任給が月に約27万円となっています。
比べてみても、小動物看護士の高収入が見込めないことは否めません。
これはペットの場合、健康保険がなく飼い主の医療費負担が大きいという産業構造上、仕方のないことかもしれません。
また、看護士に独立という概念は一般的ではなく、比較的小規模で経営している施設に雇われるケースが多いため、あまり昇給が見込めないことも事実でしょう。
そういった背景もあってか、小動物看護士の離職率は比較的高く、人材の入れ替わりは多いようです。
しかし、裏を返せば、求人はどんなタイミングでも多いということ。
転職や、ブランクがあっても再就職しやすい職業と言えるでしょう。
小動物看護士が活躍できる職場は、どんなところがあるでしょうか。
もちろん、動物病院は代表的な職場ですが、その他にも活躍できる場所はたくさんあります。
・ペットショップ
・ペットホテル
・老犬ホーム
・民間の動物保護施設 など
以上のように、ペット業界全体で看護士のニーズが高いことも、この職業の魅力のひとつです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
小動物看護士について、資格や難易度、給料事情などをお伝えしてきました。
小動物看護士とは、言い換えれば「ペットの看護士さん」。
資格については、
・国家資格「愛玩動物看護士」の資格ができるまでは、資格を持たなくても小動物看護士になれる。
・複数ある民間の資格の中で、現在もっとも信頼を置かれている資格が「認定動物看護師」。
・認定動物看護師の難易度は、比較的やさしい。合格率は85%程度。
といったところがポイントでした。
その他、
・給料は全般的に低めで、高収入は見込めない。
・ペット業界全体で看護士のニーズは高く、常に求人は多い。
といったことが特徴でした。
小動物看護士の環境は、何と言っても近い将来、国家資格が誕生することが注目ポイント。
それによって、働く人、医療を受けるペットや飼い主さんの満足度に繋がっていくことを願っています。