貿易関連の唯一の国家資格である通関士。
輸出入の際、税関に必要な手続きを行うことが主な仕事です。
ただ、近年の通関士の合格率は非常に低く、合格するのはかなり狭き門とされています。
さらに、通関士に合格するための勉強時間は約半年間が目安だと言われています。
「半年間一生懸命勉強しても、合格できる可能性が低い通関士の資格を取得する意味はあるのか?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、通関士の取得する意味があるのかどうかについて詳しく解説していきます。
この記事を読むとわかること
・通関士の難易度
・通関士の資格を取得するのに意味はあるのか
・通関士の資格はコスパがいいのか
・通関士の平均年収
・通関士の将来性
それでは、通関士の資格について詳しく見ていきましょう。
目次
通関士の資格試験はどれほど難しい?
たしかに、具体的にどれくらい難しいのか気になりますよね。
まずは、通関士の資格試験はどれほどの難易度なのか、合格率や勉強時間の目安を参考に見ていきましょう。
通関士試験の合格率
冒頭で通関士試験の合格率は非常に低いことをお伝えしました。
具体的にどれほど低いのか、実際のデータを見ていきましょう。
通関士の合格率は直近の第53回(令和元年実施)で13.7%でした。
非常に低い数値に見えますが、例年同じような合格率で、大体10%前後を推移しています。
まれに合格率が20%越えの年もありますが、一桁台の年の方が多いため、やはり非常に難関であることが再確認できます。
通関士の資格試験に合格するための勉強時間
資格取得の際に気になるのは、合格するための勉強時間ではないでしょうか。
時間がない社会人の方が資格取得を考えている場合、その資格取得は現実的なのかどうかについても考えなくてはいけません。
通関士の試験に合格するために必要な勉強時間はおよそ350時間だと言われています。
1日につき2時間ずつ勉強をしていくとして、期間にすると最低、およそ半年間は必要です。
また、通関士の試験は受験資格として実務経験が求められるなど受験制限が設けられておらず、試験形式も全てマークシートで行われるため、添削などを受ける必要がないことから、独学で勉強し、合格することが可能です。
ただし、通関業務の経験がない方にとっては、一から独学で勉強し難関試験を突破することは簡単ではありません。
未経験の場合で、資格取得を目指すのであれば、スクールや通信講座を受講しながら合格を目指すことをオススメします。
どうしてもスクールに通えない方、通信講座を受講できない場合は、500時間程度、期間にしておよそ10ヶ月間ほどと多めに勉強時間を見積もって勉強を開始するのが良いでしょう。
通関士の資格を取得して意味はある?
先にお伝えした通関士の合格率や勉強時間の目安からもわかる通り、通関士の試験はかなり難関です。
「そんなに難しい試験を突破するために膨大な時間をかけて勉強して資格取得をする意味はあるのかな?」
「せっかく勉強して合格しても役に立たなかったら意味がないしな...」
と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、通関士はメリット・デメリットともにいくつかあり、通関業務に携わったことがない人にとっては、取る意味はあまりないと思ってください。
逆に、現在も通関業務に携わっている人であれば、取得する意味はあると言えます。
というのも、実は通関士の資格は取得するだけでは評価されず、実務経験を経て初めて通関士を名乗ることができるようになります。
つまり、業務に携わる環境がない場合、資格だけ取得しても使い道が全くない、ということになります。
たしかにそう考えるのは当たり前だとおもいますが、実際は資格取得者より、圧倒的に経験者の方が採用されやすいと言われています。
ですので、特に中途採用を目指している場合であれば、資格を取得しただけでは、就職に有利になることはないと思ってください。
通関士の平均年収
資格を取得するにあたり、一番気になるのはその資格でどれだけ稼ぐことができるのかだと思います。
実際の通関士の平均年収は、およそ400万円〜500万円です。
日本人の平均年収が420万円前後であると言われているので、通関士の年収は平均的だと言えます。
また一般的には、通関士手当てや業務手当て、資格手当てなどといった何かしらの手当てとして1ヶ月あたり3,000円〜15,000円の手当てが出ることが多いようです。
合格率が低いとは言え、一般的な資格試験に比べれば短めの学習時間で、年収が3万円~15万円程度あがる可能性があると考えると、決して悪くはないと言えます。
高い年収であるとは言い難いかもしれませんが、既に何らかの形で通関業務に携わっている方であれば、年収アップのきっかけになる可能性は十分にあると思ってください。
通関士のコスパは悪い?
通関士のコスパについても見ていきましょう。
通関士のコスパは一般的に良いのか悪いのか、Twitterではこんな投稿が見られます。
勉強開始前
・通関士持ってるから偉そうにしてる上司、その他を見返すため
・発言力が上がる
・海外勤務への近道(社内ではレア資格。かける時間に対するコスパも良さそう)通関士として働きたいわけではなく、やりたいことへの近道なので勉強始めました。 https://t.co/Zb8c2Bwa8I
— ZER0 (@ZER093006353) May 18, 2019
コスパのめちゃ悪い士資格通関士だとおもう
— つっきー (@Asnano) September 30, 2019
そうですね、人によっては感じ方はそれぞれとなっています。
実際その通りで、通関士に関しては資格の有れば手当がつく企業が多いのですが、全くつかない場合もあります。
つまり、その方の勤務先である会社によって、コスパの良さ・悪さは分かれるのは当然と言えます。
また、通関士は、物流業界や貿易会社、通関という業務にしか使えず、汎用性が低いという評価もあります。
もちろん、貿易会社などに所属している場合は活躍することが期待されますが、そういった業務とは関係のない部署で仕事をするのではせっかく取得した通関士を活かすことができません。
つまり、通関士は活躍できる場が限られると言えます。
勤める企業によって、役に立つときと全く役に立たない場合があるため、結果としてコスパについては意見が分かれてしまうのです。
ただ、勉強時間350時間程度と一般的な資格と比べて簡単に資格を取得できること、それでいて年収も上がりやすいことを考えると、通関業務に携わっている方にとっては、かなりコスパは良いと考えることができます。
通関士の将来性
今は様々な仕事がAIに奪われる時代となっていますので、将来性は気になるところですよね。
確かに、近年AIに取って替わられる仕事のうちの一つに通関士を目にすることもあります。
結論をお伝えすると、今後10年ほどは今と変わらずに人間が仕事をすることになる可能性が高いです。
ただし、20年・30年すると、もしかするとAIに仕事を奪われているという可能性も否定できないのです。
実際、基本業務に関してはAIでも十分こなせると仕事と言われています。
とはいえ、通関業務は世界中と相手をすることになるので、中には想定外の事態の対応や臨機応変に対応しなければいけない場面もあります。
そういった時にはAIが対応するのには限界があるのではという意見もあります。
なので、仕事の数は減る可能性はありますが、将来的になくなることはないと思ってください。
通関士のリアルな声
最後に実際に通関士として働く方々の意見をまとめました。
通関士の資格取得を考えている方は参考にしてみてください。
・モノの流れや物流の流れが理解できるのが面白いが、残業必須の仕事である。また、勤務している会社にもよるが、残業をしないと食べていけない人もいる。(Aさん)
・ルーティンワークが苦手な人には向かない。業務量が膨大なので残業はかなり多い業務。(Bさん)
・開業ができない資格のため、必ずどこかの会社に勤務することになる。世界中の製品を取り扱えるので、グローバルな仕事をしている気分になる。(Cさん)
これらの意見から、通関士はかなり業務量が多いことがわかりますが、同時にやりがいを感じている人が多いことも伺えます。
働き方や待遇は会社によって異なるので、資格の勉強を始める前にどんな仕事内容でどんな働き方があるのかを求人サイトなどを使って調べてみるのも良いでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は、通関士のコスパや年収、将来性について解説しました。
それでは今回解説した内容をおさらいしていきます。
・合格率は10%前後、合格に必要な勉強時間は350〜400時間
・通関士の平均年収は400〜500万円
・活躍する場所は限られるが、現在の仕事や年収と比較するとコスパの良さは人それぞれ
・現段階では通関業務ができる人材は需要がある
これらを踏まえて、取得する意味があると捉えるか、他にもっとコスパの良い資格を取得すると考えるかは人それぞれです。
しかし、通関士の資格は会計や英語、パソコンの知識と相性が良いので、それらを組み合わせることでさらなるスキルアップを図ることができます。
これから資格取得を考えている人で、給料より自己成長ややりがいを重視したいと考えている人にはオススメの資格です。