カウンセリングと言うと、「カウンセラー」と「クライエント」が1対1で話す様子を思い浮かべることが多いでしょう。
しかし、クライエント(相談者)の中には、問題の根本が家族関係にあることがあり、
そういった場合は、しばしば家族全体をカウンセリング対象にすることがあります。
そんな時に活躍するのが、家族療法カウンセラーです。
この記事では、家族療法カウンセラーの資格や難易度、仕事内容や収入を知りたい人のために、
以下のことについて、解説していきます。
・そもそも、家族療法とは?
・家族療法カウンセラーの資格の取り方と難易度
・家族療法カウンセラーの仕事内容
・家族療法カウンセラーの年収
目次
家族療法カウンセラーってどんな資格?
「家族療法カウンセラー」とは、日本能力開発推進協会 (JADP) が認定する民間資格の名称です。
家族療法は、どんな家族でも対象とする心理療法ですが、
JADP認定の「家族療法カウンセラー」資格は、児童~青少年期の子供がいる家族にフォーカスを当てた資格です。
核家族化はもとより、両親の共働きや祖父母世帯からも離れて暮らすといったように、
近年、子供がいる家庭の家族は、いろんな問題を抱え込みやすい環境になっています。
そして、家族間でそれぞれがお互いに与える影響が原因で、子供が強いストレスを感じると、
ひきこもり・非行・暴力など、良くない行動となって表面化することがあります。
そんな時、解決に向けて活躍を期待されるのが、家族療法カウンセラーです。
実際に、以下のような症状に、家族療法が有効だったという報告事例もあります。
・家庭内暴力
・いじめの加害者
・不登校
・摂食障害
など
家族療法カウンセラーの資格取得のために学ぶ内容は、以下の通りです。
・家族療法の基礎知識
・アドラー派理論における子育て
・思春期の特徴
・カウンセリングの基礎知識とテクニック
・問題を抱える家族との接し方
・家族療法のケース事例
など
以上ことから、この資格の知識は、学校や医療現場、児童福祉施設など、子供と向き合う仕事で役立てることができるでしょう。
また、自分の子育てに役立てたい人にもおすすめできる資格です。
そもそも、「家族療法」って?
家族療法(かぞくりょうほう、family therapy)とは、家族を対象とした心理療法の総称。1950年代より欧米を中心に発展してきた精神療法・心理療法である。
現在では一般システム理論に基づいた(システムズ・アプローチという)家族療法が主流となっている。
システムズアプローチによる家族療法では、家族を、個々の成員が互いに影響を与えあうひとつのシステムとして考える。そのため、家族成員に生じた問題は、単一の原因に起因するものではなく、互いに影響を与え合う中で、問題を維持する原因と結果の悪循環を描いていると考えていく。
引用:Wikipedia
家族療法について、Wikipediaでは、専門用語も交えて以上のように説明がありました。
これを、心理学に詳しくない一般の人向けに説明すると、どのようになるでしょうか。
個人の問題行動の背景には、家族関係に原因があると考えるということは既にお話ししました。
その家族関係を分析するために、カウンセラーは家族を対象にカウンセリングを行うことになるのですが、
ここで大事になってくるのは、原因は探るが追求はしないという点です。
原因を突き詰めてしまうと、家族の中での犯人捜しになってしまい、家族関係はより悪化してしまうからです。
そうなることを避けるために、家族療法では、
・現在=問題の認識、共有
・未来=解決に向けた手段を探る
この2つに意識を向けてカウンセリングを進めていきます。
また、家族療法では、問題解決能力は家族自身が持っていると考えます。
そのため、カウンセラーが家族関係を改善するアドバイスを行うことで、
徐々に家族関係が良くなっていき、まわりまわって個人の問題症状も治まってくることを狙います。
このように、家族療法では、個人の問題症状を治療するのではなく、
個人の問題の原因となっている家族関係の問題を解消することを目的としているのです。
家族療法カウンセラーの取り方と難易度
家族療法カウンセラーは、日本能力開発推進協会が独自で認定している民間資格です。
ここでは、資格について、取得方法と難易度について解説します。
資格の取得方法
受験資格
家族療法カウンセラーの試験を受けるには、指定の教育機関のカリキュラムを修了する必要があります。
指定教育機関は、資格のキャリカレという通信教育。
DVDとテキストがセットになった教材で、添削問題もついています。
学習期間の目安は約4か月となっています。
受験資格は、この通信教育を受けることという1点のみで、年齢や学歴などの制限はありません。
試験方式
資格試験は、問題を自分で取り寄せて、在宅受験となります。
問題は日本能力開発推進協会から取り寄せますが、協会から試験が発送されるのは、以下3つの条件が揃ってからとなります。
・協会HPからの検定試験申込
・協会にて、認定教育機関の課題が修了済みの確認
・受験料(税込5,600円)の支払い
どれかひとつでも欠けていると、いつまで経っても試験問題が届かないということになってしまいます。
特に、通信教育は勉強するだけでなく、課題提出まですべて終わらせておく必要があります。
最近は、フリマサイトなどで中古の教材セットが出品されているケースがありますが、
中古教材では、添削課題が修了できない可能性が高いので、注意が必要です。
資格の難易度は?
家族療法カウンセラー資格の難易度は、比較的易しいと言えるでしょう。
試験は、前述の通り在宅での試験となります。
在宅試験のため、以下の点で受かりやすいと言えます。
・テキストを見ながら解答できる
・時間制限がない
合格基準は、70%以上の正答率です。
家族療法カウンセラーの仕事内容は?
「家族療法カウンセラー」という職業があるわけではありませんので、
家族療法のみを扱うカウンセラーになるということは、あまり現実的ではないでしょう。
実際に、家族療法カウンセラーとしての求人はほぼないと考えられます。
また、就職にあたって家族療法カウンセラー資格が必要とされるケースもないと言って良いでしょう。
では、どのような仕事で資格の知識を活用することができるでしょうか。
ここでは、以下の2つを例に挙げてご紹介します。
・カウンセラー
・子供の教育に関わる仕事
カウンセラーとして
まず第一に、カウンセラーとして働く場合に有効となるでしょう。
クライエントの問題に、家族関係の影響があるといち早く見抜くことができれば、スムーズに解決に導くことができます。
カウンセラーは、学校や病院・クリニック、公務員として働くことが代表的な場所として挙げられます。
しかし、カウンセラーとして働くには、相応の資格が必要となることが多いようです。
カウンセラーとして働くにあたって、必ず資格が必要なわけではありませんが、
大学などで基礎からしっかり心理学を学んだ人でないと務められないというのがカウンセラーの世界です。
一番代表的な資格は「臨床心理士」。
また、近年誕生した「公認心理師」も心理職としては初の国家資格として、注目されています。
この2つが、カウンセラーとして働くにあたって、一番メジャーで信頼の置かれている資格となっています。
子供と向き合う教育者として
もちろん、カウンセラーでなくても、資格を活かすことはできます。
子供としっかり向き合うことが必要な仕事では、家族療法カウンセラーの知識が役立てることができるでしょう。
例えば、保育士や学校の教員。
子供と長時間かかわり、見守る中で、子供が発する家族関係からのストレスのサインに気づくことがあるでしょう。
そんな時は、カウンセリングとはいかないまでも、保護者へのアドバイスなどを通して、
子供のために力になることができるかもしれません。
また、子供の能力を引き出すような職業にも有効でしょう。
例えば、進学塾の講師やプロスポーツ選手の育成コーチなどは、子供の家庭環境の良さも大事な要素になってくるはずです。
家族療法カウンセラーの資格知識があれば、子供の能力をより引き出すことに繋げることができるかもしれません。
家族療法カウンセラーの年収は?
家族療法カウンセラーという職種があるわけではありませんので、
「この資格を取ると、年収は○○万円くらい」というはっきりとした指標があるわけではありません。
カウンセラーとして働くのであれば、フルタイムで働いて年収400万円前後となるのが平均的なようです。
パートタイムであれば、職場によってかなり異なってきます。
目安は以下の通りです。
・医療機関:時給1,000~2,000円
・学校:時給3,000~5,000円
カウンセラー以外で、資格を本業に役立てたい人は、その職業の平均年収を参考にしてください。
家族療法カウンセラーの資格は、直接収入UPに繋がるものではありません。
しかし、資格の知識を自分の功績に繋げることは可能と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
家族療法カウンセラーについて、資格の難易度、仕事内容、収入についてお伝えしてきました。
まとめると、以下の通りです。
・家族療法カウンセラーとは、児童~青少年期の子供がいる家族にフォーカスを当てた民間の資格
・家族療法とは、個人の不調として表面化した、家族関係の良くない循環を解消すること
・家族療法カウンセラーの資格は、在宅受験で取りやすい
・家族療法カウンセラーの資格は、カウンセラーや子供と向き合う仕事で活かすことができる
・収入は、資格とは関係なく、本職の年収に準ずる
家族療法カウンセラーは、心理学初心者でも学びやすい資格です。
資格の知識を活かせる場所も多いので、興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。