近年のストレス社会を背景に、メンタルヘルスの重要性が注目されるようになってきました。
心理系の資格やメンタルヘルスの資格はたくさんありますが、
今回は、「メンタルケア心理士」についてスポットを当てて解説していきます。
そんな疑問をお持ちの方に、この記事では以下のことをご説明しています。
・そもそも、メンタルケア心理士とは?
・資格の概要、受験資格、難易度
・「メンタルケア心理士」の将来性について
それでは、順番に見ていきましょう。
目次
そもそも、メンタルケア心理士とは?
「メンタルケア心理士」とは、民間資格の名称です。
「メンタルケア心理士」という職業や職種があるわけではありません。
では、メンタルケア心理士の資格はどのような仕事に役立てることができるのでしょうか。
現実では、医療・福祉・教育・一般企業など、多くの分野で資格の知識を活かすことができます。
また、仕事ではなくてもボランティアとして、地震や水害などの被災地でカウンセラー活動をすることも注目されています。
メンタルの不調は、悩みやトラウマ、不安に思う気持ちといった軽度なものから、
双極性障害や統合失調症といった精神疾患と呼ばれる重度なものまでさまざまです。
メンタルケア心理士は、軽度な不調やストレスによる身体的な症状(頭痛、不眠、無気力など)の相談に応じることが求められています。
ご承知の通り、医師以外は診療を行うことはできません。
相談に応じて、自力で回復するための補助を行うことが求められます。
場合によっては、医師や自治体などとの連携が必要になってくることもあります。
メンタルケアとは、「心の状態(メンタル)を手入れ(ケア)して、元気な状態に保つ」こと。
人の心の状態を元気にすることであれば、どんなことにでも使えるので、活躍の場は特定の分野に限定されません。
メンタルケア心理士の資格や知識は、仕事からプライベートまで、いろんな場面で役立てることができるでしょう。
メンタルケア心理士の資格の概要
メンタルケア心理士の資格は、以下の3つの団体が共同で認定する公的学会認定資格です。
・メンタルケア学術学会
・生涯学習開発財団
・ヘルスケア産業推進財団
公的学会認定資格とは、政府関連機関である「日本学術会議」が指定する「公的学会」の資格だということです。
たくさんの種類が存在する心理系の資格の中で、「公的」であるというだけあって、信頼性もあり、
厚生労働省が実施している「ジョブ・カード」に記載できる資格の対象となっています。
上記の団体が認定するメンタルケアの資格には、レベル別に3つの資格があります。
初級から順に、以下の通りです。
・メンタルケアカウンセラー
・メンタルケア心理士
・メンタルケア心理専門士
学習領域 | |
精神解剖生理学 | 以下の項目の基礎知識を学ぶ。 ・生化学(遺伝子、染色体、脂肪、タンパク質など) ・解剖生理学(人体の骨格、筋肉、臓器、神経など) ・生理心理学、認知心理学(ストレス、感情、記憶など) ・薬理学(薬の吸収、代謝など) |
精神医科学 | 以下の項目の基礎知識を学ぶ。 ・精神障害(統合失調症、双極性障害、摂食障害など) ・発達心理学(発達過程、認知発達など) ・身体疾患(脳卒中、ガン、認知症、更年期障害など) ・薬剤(抗うつ薬、抗精神薬、睡眠薬など) |
カウンセリング基本技法 | ・カウンセリングとは(歴史、目的など) ・カウンセリング概論(共感的理解、心理アセスメントなど) ・カウンセリング倫理(守秘義務など) ・カウンセリングと医療の関係(地域精神医療、ケースカンファレンスなど) ・心理療法基本(精神分析療法、ケーススタディなど) |
メンタルケア心理士の受験資格について
メンタルケア心理士の資格について、受験資格は特にありません。
誰でも受けることができます。
しかし、資格認定の条件はいくつかありますので、確認していきましょう。
実は、メンタルケア心理士の資格試験があるわけではありません。
以下2点の条件を揃えて、資格認定のための申請を行うことができます。
①「文部科学省後援こころ検定2級試験」に合格する
②以下の条件のいずれかを満たしている
・認定心理士の資格を持っている者
・産業カウンセラーの資格を持っている者
・4年制大学の心理学部や学科などを卒業した者
・メンタルケア心理士の認定講座を受講し、修了した者
こころ検定について
こころ検定とは?
こころ検定とは、2018年(平成30年)に文部科学省の後援を受けて始まった新しい検定試験です。
運営は、メンタルケア心理士と同じ「メンタルケア学術学会」。
人のこころを科学的に把握することで、「生きやすさ」や「こころの豊かさ」を得ることを目指しています。
こころ検定の試験概要
こころ検定には、1~4級のレベル別試験があります。
4級 | 自分のこころを理解できるようになることを目指す。出題範囲は、基礎心理学の基礎知識。 |
3級 | 自分のこころを成長させるために、心理学の知識を活用できるようになることを目指す。3級と4級は、中学卒業レベルで合格が目指せるとされている。 |
2級 | カウンセリングの知識と技術を持つことが求められる。出題範囲は、上記メンタルケア心理士の「学習領域」と同じ。 |
1級 | カウンセリングの応用知識・技術を持つことが求められる。 |
試験はすべて「CBT試験」という、マークシート試験のような雰囲気の四者択一問題です。
テストセンターという決められた会場に行き、準備されたパソコンで試験を受けます。
1級のみ、CBT試験の他に、実技・口述試験があります。
試験の開催は、2~4級が年に4回。
1級は、CBT試験が年に3回、実技・口述試験が年に2回行われています。
受験機会が多く準備されているのは嬉しいですね。
こころ検定の受験資格
2~4級については受験資格に制限はなく、誰でも受けることができます。
1級のみ、以下の通り受験資格の制限があります。
・こころ検定2級 合格者
・メンタルケア心理士 有資格者
年齢の制限や学習の修了要件などはありません。
心理学に興味がある人には、広く学んでもらいたいというメッセージ性を感じます。
こころ検定の勉強方法
3級と4級は、独学となります。
公式サイトからテキストと問題集を購入できるようになっています。
1級と2級は、通信教育となります。
以下の指定教育機関から購入することができます。
テキストは上記の指定教育機関以外からは販売されていません。
たまに、メルカリなどのフリマアプリで中古が販売されています。
しかし、メンタルケア心理士への登録を希望していて、認定講座修了が必要な場合は、
中古教材では修了証が手に入らず、メンタルケア心理士に登録申請することができませんので、注意が必要です。
テキストとDVDだけあれば良いという人であれば、安く手に入るので良いかもしれませんね。
メンタルケア心理士(こころ検定2級)の資格の難易度は?
ご説明した通り、メンタルケア心理士の資格試験はありませんので、こころ検定2級の難易度をご説明することになります。
結論からご説明すると、結構難しいというのが受験者の感想のようです。
まず、公式に発表されているデータを確認してみましょう。
こころ検定2級の合格基準のは、正答率70%以上です。
気になる合格率ですが、こちらは正式な発表はありません。
近年は54%程度の合格率だと言われているようです。
こころ検定は始まって数年しか経っていない試験なので、情報がかなり少ないです。
少ないながらも、実際の体験談をもとに、試験の難易度や対策を解説していきます。
合格はできたものの、テキストの隅々から細かい出題もあってかなり焦った。甘く見積もっていた。
テキストの内容が難しく、問題集中心で勉強したが、テキストを中心に勉強するべきだったと痛感した。
まとめてみると、「テキストの内容は難しいし、効率が悪いようだけど、テキストの熟読が大事」という内容でした。
このような口コミの背景には、CBT試験という試験方式があるようです。
CBT試験とは、パソコンで答えをクリックで選んで解き進めていく試験方式で、
こころ検定2級は、40問を120分で解きます。
持ち込みは不可です。
このCBT試験、何がクセモノかと言うと、
広い試験範囲、問題の中から、受験者ごとに毎度ランダムに40題を抽出して試験を行っているという点です。
そのため、過去問もなければ、「ここは良く出る!」というような問題の出題傾向もありません。
問題は完全にデジタル化されていて、問題パターンは何通りもあるでしょうから、
対策のしようがないのが厄介だということが伺えます。
「効率は悪いようだが、テキストを熟読することが一番の対策」という体験談はごもっともと言えそうです。
以上のことから、通信教育でテキストを入手することはマストでしょう。
メンタルケア心理士の将来性はどう?意味ないってホント?
メンタルケア心理士の将来性ですが、資格そのものはさておき、メンタルケアの分野は将来性を秘めていると言って過言ではないでしょう。
「資格そのものはさておき」と言いますのも、このメンタルケア心理士の資格を取って何か良いことがあるかと言うと、
知識を活かす程度のことで、現時点では役立てる特別な何かがあるわけではないからです。
「メンタルケア心理士の資格があるから就職が決まった」ということもないでしょうし、
収入がUPしたり、仕事が舞い込んできたりというのも考えにくいことです。
資格を取るのは結構大変なのに、あまり役に立つことはないというのは、少し残念ですね。
実際に、「公的資格とアピールするのは大げさ」「資格を取っても意味はない」などと言う人もいます。
しかし、資格は資格。
持っていて邪魔になるものではありませんし、勉強して得た知識は意外なところで役に立ったりするものです。
意味ないなんて事は全くありません。
人とのコミュニケーションや自分のメンタルケアに活かすことで、本業のレベルアップにつなげることもできるかもしれません。
また、社会的にメンタルヘルスの重要性が増していることは、誰の目にも明確でしょう。
日本では、今はまだカウンセリングはメジャーではありませんが、
欧米諸国では、カウンセリングで心の健康をメンテナンスすることは当たり前になっています。
メンタルケアの分野は、今後もっと需要が生まれてくると、多くの人が想定しているのではないでしょうか。
今はまだメンタルケア心理士の資格自体は未知数です。
しかし、メンタルケアの需要が高まったときに、資格を取るために得た知識は大いに役立つことでしょう。
まとめ
この記事では、メンタルケア心理士について、以下のことを解説してきました。
メンタルケア心理士とは?
・民間資格の名称
・軽度なこころの不調やストレスによる身体的な症状に対する相談に応じる知識と技術を持つ
メンタルケア心理士の受験資格や難易度は?
・メンタルケア心理士の資格申請には、以下2つの条件が必要
①こころ検定2級の試験に合格する
②以下の条件のいずれかを満たしている
a.認定心理士の資格保有者
b.産業カウンセラーの資格保有者
c.4年制大学の心理学部や学科などを卒業した者
d.メンタルケア心理士の認定講座を受講し、修了した者
・こころ検定2級の受験資格はなく、誰でも受験可能
・こころ検定2級の難易度は、やや高め
メンタルケア心理士の将来性は?
・メンタルケア心理士の資格の将来性は未知数
・メンタルケアの分野は、将来性を秘めている
メンタルケア心理士の資格は、どんな人にも取って損はない資格でしょう。
この記事が、メンタルケア心理士の資格に興味があった人の参考になれば幸いです。