現在産業カウンセラーの需要は高まってきています。ですので、資格を取得したいと思っている人も多いと思います。
しかし、
・産業カウンセラーってどんな仕事なの?
・資格試験の内容と合格率・難易度も知りたい
・独学で資格取得できるの?
など、多くの疑問がある人もいるかと思います。そこで、今回は産業カウンセラーの仕事内容、資格試験の合格率や難易度、独学で学習可能なのかについて、解説していきます。
目次
産業カウンセラーって何?資格の概要と仕事内容を解説!
産業カウンセラーとは、1992年に認定がスタートした資格です。元々は公的資格でしたが、2001年からは民間資格となりました。
どのような資格なのか、どのような仕事をするのかについて具体的に解説していきます。
産業カウンセラーとは
企業の労働者やその家族に対してカウンセリングを行う専門家を、産業カウンセラーと言います。企業の労働者とは、従業員から経営者までを指し、企業全体の環境改善を目指します。
労働者間で起こっている人間関係の悩みや様々なハラスメント行為に対して、労働者が自ら問題を解決し快適に働けるように適切なアドバイスと支援を行います。
仕事内容
産業カウンセラーとして働く場合、労働者の職業人生(Quality of Working Life)の実現を助けることを最大の目標にし、業務を行います。この目標を達成させるために、対象者に3つのサポートを提供します。
メンタルヘルスの対策をサポートする
心の病を患ってしまった労働者に対するカウンセリングを実施し、問題解決につながるようにサポートします。心の病は、労働者の業務内容だけでなく周囲の人間関係が関わっていることもあるため、慎重に話を聞き、本人の労働環境が快適になるように手助けします。
https://twitter.com/takabohhh40_/status/1263041341816098816?s=20
キャリア開発に対してサポートする
労働者のキャリアアップで見えてくる悩みを聞き、アドバイスなどを行います。昇進や、それに伴う部下の増員などは、当人にとっては周囲の労働者に話しにくい悩みになる場合もあります。
そのような時に、産業カウンセラーというカウンセリングのプロからのアドバイスがあれば、孤独になることを防げる可能性があります。
職場内の人間関係をサポートする
様々なハラスメント(パワハラ、セクハラ)、いじめ等で悩んでいる労働者の話を聞き、それを踏まえた対策を提示・新しい組織のしくみを提案します。この段階で、労働者が心の病になることを防げるように産業カウンセラーは業務に取り組みます。
また、企業への教育として研修を行い、職場内でのコミュニケーションを教えることで、労働環境の根本からの改善を図ることもあります。
産業カウンセラーになる条件は?試験内容は?
産業カウンセラーの資格を持つためには、試験を受けて合格しなければいけません。そこで、試験の受験資格や内容について説明します。
受験資格
産業カウンセラーの試験を受けるためには、大きく分けて4つの条件のどれかに当てはまっている必要があります。
1.成人で日本カウンセラー協会の養成講座修了者
2.4年生大学において心理学・人間科学等の専攻を卒業し、なおかつ指定の単位を取得している者。ただし、養成講座の技能を取得するための講座の受講が必須
3.大学院において心理学・人間科学等の専攻を修了し、なおかつ指定の単位を取得している者
4.社会人として3年間の職業経験を有し、大学院研究所において、指定の専攻を修了した者
これは大まかな分類なので、詳しくは公式HPをご覧ください。
※大卒(学士)での受験は2016年度で終了しているので、注意してください。
結論として、大学院にて、指定の専攻を修了していない場合には、養成講座の受講が必須となります。
講座はe-Learning制のみとなっており、通学学習とWeb学習の2種類を組み合わせて受講します。
養成講座の主な内容
体験学習(面接) | 15~16日間(104時間)の通学 |
ライブ理論講義 | 2日間(12時間)の通学 |
Web配信講義視聴 | 32時間ほどe-Learningで行う |
理解度確認テスト | 13時間ほどe-Learningで行う |
面接の体験学習に関する在宅課題6課題 | 28時間ほどホームワークで行う |
講座の期間は、6か月と10か月から選択できます。受講料は297,000円となっており、決して安くはない金額が必要なので注意してください。
とはいえ、満足度の高い講習となっているので、資格を取得するのであれば、十分価値のあるものとなります。
6ヶ月通った産業カウンセラー養成講座も、本日が最後の授業。自己成長の場として本当に価値ある時間だった。そしてただただ楽しかった。あとは試験に合格せねば!
— 3769(みなろぐ) (@3769engei) October 27, 2019
試験内容
産業カウンセラーの資格試験は、学科試験と実技試験があります。ここでは、
・内容の詳細
・試験の日程、受験会場
・受験料
の3点について、解説します。
内容の詳細
学科試験は、5者一択のマークシート方式を60問程度、150分以内に解答します。
主な分類 | ①基礎的な学識(概論、パーソナリティ理論)
40問程度 |
②基本的な事例への対応能力・傾聴能力
20問程度 |
出題内容 |
・産業カウンセリング概論 ・カウンセリングの原理及び技法 ・パーソナリティ理論 ・職場のメンタルヘルス |
・傾聴の基本 ・カウンセリングをする際の実践に即した知識 |
実技試験は、口述とロールプレイ(受験者間でのミニカウンセリング)によるカウンセリングの実技を30分程度で行います。
出題内容 |
・産業カウンセラーとしての基本的態度 ・技法の適切な活用 ・自己理解的側面 ・社会的貢献への姿勢及び認識 |
※講座受講時、傾聴の基礎技術の習得が見込まれる受講者は実技が免除される場合もあります。
試験の日程・受験会場
試験の日程は、学科試験・実技試験どちらも1月中に行われ、3月中に合格発表があります。そして、学科試験の受験会場は全国16会場、実技試験は全国13会場になります。日程、会場の詳細は公式HPでチェックしてみてください。
受験料
受験料は、学科試験と実技試験で別々に支払う必要があります。
内訳 | 金額 |
学科試験 | 10,500円 |
実技試験 | 21,000円 |
合計 | 31,500円 |
産業カウンセラーは誰でもなれる?難易度や合格率を解説
たしかに、試験がどれくらい難しいのかは、気になるポイントですよね。ここでは、産業カウンセラーの資格試験の難易度や合格率について、解説していきます。
難易度
産業カウンセラーの資格試験は、大学院を卒業していなくても養成講座を受講し受験資格を得ることができます。
しかし、養成講座の受講時間が計189時間必要となり、授業時間以外の復習の時間を含めると、およそ200~300時間ほど(1日5時間勉強で計算すると40日~60日)の勉強が必要になってくると思われます。
このように、産業カウンセラーは受験資格の敷居は低いですが、かなりの勉強量が必要な場合があるということが分かります。
その勉強量を補うために試験日のギリギリまで勉強を続け知識を詰め込む人が多いことや、実技の試験もあることから、試験の難易度は高めと言えるでしょう。
https://twitter.com/CON_emusic/status/1212500446574628867?s=20
合格率
試験の合格ラインは、およそ60%の正答率が求められます。また、合格率は例年60~70%となっており、受験者の半数以上が合格していることから、合格率は高いと言えるでしょう。
学科試験(2019年度)
内訳 結果 志願者数 2,891名 欠席者数 103名 受験者数 2,788名 合格者数 1,936名 合格率 69.4%
実技試験(2019年度)
内訳 結果 志願者数 1,176名 欠席者数 54名 受験者数 1,122名 合格者数 746名 合格率 66.5% ※総合合格者数:1,884名 合格率:62.3%
独学で資格取得は目指せるの?
産業カウンセラーの資格を独学で取得することはできません。なぜなら、先ほども説明した通り、
・協会の養成講座の全課程または一部の課程を受ける必要がある
・大学院で心理学や人間科学等の授業を受け、単位を取得する必要がある
からです。人の心や生活に介入する仕事なので、講座の受講や実技の試験、大学院での授業で知識と技術を習得することが必要なのですね。
お金を払わずに、資格を取得することは不可能です。
資格を取得したらどのように働ける?資格を持つメリットとは?
産業カウンセラーの資格をもったとしても、それをどのように扱い、生かせばよいのかが分からない人も多いのではないでしょうか。ですので、この資格を生かせる就職先や資格の登録・更新について、さらにこの資格を持つことのメリットも紹介します。
主な就職先
産業カウンセラーとしての就職先は、主にメンタルクリニック、人材派遣会社、雇用推進事業団体、学校といった施設が多いようです。また、企業に在籍しながら社員の相談業務を担当する場合に、資格を取得し働くというケースもあります。
資格を取得するメリット
産業カウンセラーの資格を持つことには様々なメリットがありますが、その中でも大きい2つのメリットについて紹介します。
仕事の幅が広がる
産業カウンセラーは、認知度が高い資格です。特に人事職や精神保健担当者の求人の条件に含まれていることが多く、また、人材派遣業界にも活躍の場が多いことが特徴となっています。
https://twitter.com/iWZB980p8O82TWT/status/1180272633255874560?s=20
人事職・産業保健部門でのスキルアップ
民間企業での人事職や産業保健部門においては、産業カウンセラーの資格取得を勧められたり、または取得の指示がでることもあります。つまり、この資格があればより仕事の質が上がるため、スキルアップが目指せるのです。
https://twitter.com/mayuhyunjae/status/1254886663479627776?s=20
要注意:資格を生かすには登録・更新が必要である
最後に1点だけ注意点をお伝えします。
産業カウンセラーの資格自体は、一度試験に合格すれば登録や更新作業は行わなくても資格が失効することはありません。
しかし、産業カウンセラーとして働く場合は、協会に登録し5年に1回の更新を行います。協会の会員になるための費用は下記の表の通りです。
登録料(入会金) | 7,000円 |
更新料(5年に1度) | 10,000円 |
合計 | 17,000円 |
登録料は初回のみですが、更新料は5年ごとにかかります。1度取得すれば永年無料で役立てられるわけではないので、気をつけましょう。
まとめ
ここまで、産業カウンセラーとはどのような資格なのか、その資格試験の難易度や合格率などを説明してきました。大まかに言うと、
・労働者やその家族にカウンセリングを行う専門家
・受験資格を得るには、養成講座の受講や大学院で心理学・人間科学等の授業単位を取得する必要がある
・独学での資格取得は難しい
という資格であることが分かりました。働く人の悩みを解決しより良い職場環境を作り出すことは、今の社会において非常に重要です。そのサポートができる産業カウンセラーの資格を持てたなら、あらゆる場所で活躍することができるでしょう。