医療施設や介護施設などでお仕事をされている方の中には、身体的なケアの他にもっと他にできることはないかと悩まれている方もいるのではないでしょうか。
その中で、音楽に興味があり小さい頃からピアノを習っていたなど、楽器を弾いた経験があり、その技術を人の為に生かすことはできないだろうかと思っている方もいるでしょう。
そこで、
・音楽が持つ力を試してみたい
・音楽で心のケアをしてみたい
・もっと音楽が持つ力を色々な面で役立てたい
など、音楽に興味があり、それを仕事に生かすことができないだろうかと音楽療法士について考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では
・音楽療法士は、どんなことをするのか?
・音楽療法士の資格を取るのは難しいの?
・音楽療法士になったらどんな仕事ができて、お給料はどのくらいか?
などをご紹介します。
音楽療法士の資格を取得し、音楽の力で一歩先のケアを目指してください。
目次
音楽療法士とは
音楽は、人間のさまざまな部分に刺激を与え、心理的な面や生理的な面、社会的な面などにも影響を与えることが分かっています。
その音楽が持つ力を利用して、患者もしくは利用者の心の安定や身体の回復、言語の発達や社会的問題行動へのケアなど、健康な生活を促すことが音楽療法です。
そして、その音楽療法の効果がより得られるように一人一人にあったプログラムを考え実践することが音楽療法士としての務めです。
音楽療法士はどんなところで活躍しているの?
働く職場はさまざまですが、主に多いのは、高齢者介護施設や障がい者施設、児童福祉施設です。
その他に、病院や特別支援学級などの教育の場、地域支援センターなどさまざまな所で活躍しています。
また、対象とする年齢も、乳幼児から高齢者まで幅広く行われます。
1つの施設に正社員として専従する場合の他に、個人で数カ所を廻って活動する場合や地域の施設や講演会などに足を運んだりと、ニーズに合わせて幅広く活動する事もあります。
その他にも、精神科のカウンセリングに音楽療法士としてアドバイスしたり、青少年更生施設などに慰問にまぬかれたりする事もあるようです。
音楽療法士が行うこと
実際にどのようなことを行うのでしょうか。
高齢者介護施設や障がい者施設などで集団で行う場合は、
・音楽に合わせて歌を唄えるように促す
・音楽に合わせて体を動かす
・楽器に触れ、音を出す又は演奏を助ける
・楽器を一緒に演奏する
・呼吸や発声法などの指導
など、色々な仕法で利用者がスムーズに行えるようにあらゆる面から支援します。
このように、一緒に歌ったり演奏したりする方法を能動的音楽療法といいますが、その他にクラシックなどを聴かせるなどの受動的音楽療法もあります。
そして、音楽を通りして心のケアを行い、前向きな思考への働きかけや運動機能や認知力の維持向上や回復などを行います。
個人で行う場合は、その人に合った音楽療法のプログラムを作成して行います。
例えば、脳梗塞の後遺症や失語症の方には、機能回復を目指して音楽を利用したリハビリテーションを行います。
また、精神障害の場合には、心理面での癒しの効果を目的に行われ、自閉症などの治療にも有効と言われています。
このような時は、他の医療スタッフと連携して行います。
音楽療法士の資格について
では、音楽療法士になるためには、どうしたらいいのでしょう。
音楽療法士は、国会資格ではありませんので、民間の資格になります。
ですから、極端に言えば資格がなくても音楽療法士として働くことも可能です。
ですが、音楽療法の知識がなければ、周囲に認めてもらう事もできませんし効果的な指導を行うこともできません。
そこで、音楽療法士としての働きたいと思うのであれば、是非資格を取ることをお勧めします。
音楽療法士の資格の中で最も信頼性があり知名度が高いのは『日本音楽療法学会』の資格です。
その他、メンタル心理ミュージックアドバイザーや音楽健康指導士、ミュージックインストラクター、音楽セラピストといった音楽療法の資格もあります。
副業やボランティアなど奉仕の気持ちから活動を考える場合は、指導士やインストラクターなどの資格から入り、臨床経験を積んでいくことで音楽療法士として認めてもらうこともできるでしょう。
音楽療法士の資格取得の難易度は?
音楽療法士の資格は、国家資格ではありませんから民間での認定試験であれば、通信教育を3ヶ月から6ヶ月、又は実技などを行い試験に合格することで取得することができます。
民間の通信講座などでは、1日20分~30分の在宅学習だけで資格取得が可能と言われており、しっかり与えられた課程を学習して望めば合格することができます。
また、民間の資格の中には、ピアノが弾けなくても、楽器演奏ができなくても受験可能なところもあります。
ですが、民間で取得できる簡単な資格では、雇用主に認められるのは難しいでしょう。
日本では、あまり職業として確立していない音楽療法士ですが、日本音楽療法学会の資格であれば、3年以上の専門的な教育を受けることもあり信頼性が高いので、専門的に活躍していきたいと思うのであれば、「日本音楽療法学会」の資格取得をお勧めします。
日本音楽療法学会の試験の難易度は、必修科目をしっかり修得していれば、毎年8~9割の方は合格しているようですから、認定試験自体はさほど難しい試験ではないようです。
ですが、認定試験を受けるまでの過程が厳しいようです。
日本音楽療法学会について
では、音楽療法士の資格の中でも信頼性が高いと言われている日本音楽療法学会の資格について詳しく見てみましょう。
資格を取得するまでには、医療の知識や福祉の制度、心理学などの幅広い知識も必要とされます。
資格試験を受けるまで
日本音楽療法学会の受験資格を取るには次の二つの方法があります。
認定校コース
日本音楽療法学会認定 音楽療法士資格試験受験認定校へ入学し、音楽療法について体系的に学ぶ。
必修講習会コース
学会が主催する(補)資格試験受験のための制度に参加する。
引用:日本音楽療法学会
大学に行ける方は、認定校コースを選択するのがいいようですし、すでに在職して大学に行くのは難しい方は必修講習会コースを選択するといいでしょう。
必修講習会コースでは、受講前の試験にピアノの実技や弾き歌い、音楽理論、小論文などもあります。その他に学会参加や研究発表などもあります。
最終段階の認定試験は、書類審査と面接があります。
認定校在学中や必修講習会などで音楽の専門的な技術や知識を身に付けることが求められます。
ご覧の通り資格取得の受験が困難というより、受験できるようになるまでの過程がかなり難しいようです。
日本音楽療法学会の認定校とは
日本音楽療法学会では、音楽療法士資格試験受験認定校に入学し音楽療法を専攻して必要なカリキュラムを修了することで音楽療法士の受験資格を取得することができます。
ですから、必修講習会コースに任じられた臨床経験5年以上などの規定がありませんので、より早く資格を取得できる道といっていいでしょう。
そこで認定校をご紹介します。
札幌大谷大学、茨城音楽専門学校、国際音楽療法専門学院、東邦音楽大学、国立音楽大学、東京心理音楽療法福祉専門学校、聖徳大学、昭和音楽大学・大学院、東海大学、長野医療衛生専門学校、名古屋音楽大学、名古屋芸術大学、同志社女子大学、相愛大学、武庫川女子大学、平成音楽大学
このように北海道から九州まで広くありますので、お住いの地域の近くを探してみるといいでしょう。
音楽療法士の需要は少ない?
次に、無事音楽療法士の資格を取得した後にどのような就職先があるか見てみましょう。
日本では、まだ音楽療法士の知名度が低く治療やケアなどの効果が評価されておらず、残念ながら音楽療法士として正社員の勤務先は非常に少ないのが現状です。
また、1カ所で音楽療法士のみで仕事ができる職場はほとんどありません。音楽療法士の求人があっても、介護業務や看護助手などと兼務するという条件付きが多いようです。
その他に、音楽療法士だけで生計を立てる場合は、個人事業として自宅などで開業する場合もあります。その場合は、施設などに委託を受け、訪問し音楽療法を提供し報酬を受け取るといった形になります。
また、音楽療法を提供している会社に就職し、その会社が提携している施設などに訪問する形もあるようです。
音楽療法士を専門的に取り入れている企業は少ないですから、自分が就職したい地域に音楽療法士の求人があるかあらかじめ調べておくといいでしょう。
また、音楽療法士は、すでに臨床経験を積んだ音楽療法士から学ぶといいますから、音楽療法士が働いている場を知っておくことも必要になるでしょう。
音楽療法士の給料は高い?
残念ながら、音楽療法士だけの収入は高いとはいえません。また音楽療法士のみの就職は厳しいでしょう。
一般的に、音楽療法士のみで施設などに就職した場合、施設の規模や業務内容によりますが、最近の求人を見ても18万円~20万円前後もしくは、16万円~18万円というところもあります。
介護業務や看護助手業務と兼務すると少し高いようです。
その他、自営業として開業する場合ですが、始めは営業に廻るなどして知名度を上げるまでは苦労が絶えないでしょう。
このようなことから、医療や福祉の現場で仕事をしたいと思っているのであれば、国家資格である「看護師」や「理学療法士」、「作業療法士」、又は「言語聴覚士」の資格を取得した方が将来的には安心でお給料も高いといえるでしょう。
ですが、高齢化社会の日本では、高齢者施設などで行うレクリエーションや運動機能訓練に、音楽療法は少しずつ成果を上げて来ており、これからもっともっと求められる職業だと思われます。
音楽が持つ力を信じて、さまざまな場面で効果をあげていく事がカギとなるでしょう。その為には資格取得後も色々な経験や努力、研究が必要と思われます。
まとめ
音楽療法士は、とてもやり甲斐のある仕事ですが、収入面では厳しいのが現実のようです。
この記事では、
・音楽療法士の資格は、「日本音楽療法学会」の資格が信頼性がある
・音楽療法の今後の可能性は大きい
・音楽療法士の給料は決して高くない
・音楽療法士の就職は、まだ少ない傾向にある
などをご紹介しました。
音楽が持つ力で、回復困難と言われた方が改善したり、元気を取り戻したり、溢れる笑顔がみられるようになったら素晴らしいですね。もっと音楽療法士の仕事を知り、活躍される人が増えますように。