心理系の道に進もうと考えている人で、臨床発達心理士を目指している人もいると思います。
そんな中、こんな疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
・そもそも臨床発達心理士ってなに?
・試験は難しいの?
・どのくらい年収がもらえるの?
ここでは上にあげた疑問を徹底的に解説していきます。
目次
臨床発達心理士とは
そもそも臨床発達心理士は最近できたばかりの資格ですので、よく分からない人もいると思います。まずは、臨床発達心理士について簡単に説明します。定義としては次の通りです。
臨床発達心理士:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構が認定する民間資格。発達心理学をベースにしている点が特徴。
結論として、臨床発達心理士は、職業ではなく資格です。
簡単に言ってしまえば、機構に認められた資格の一つです。
人の発達や成長、加齢に寄り添いながら、必要とされる心理援助をすることを目指した資格です。
「発達」と聞くと対象者は子どもだけと思いがちですが、そんなことはありません。
子どもから大人まで、幅広い世代を生涯にわたり支援しなければなりません。
そのため、資格取得後の仕事内容は多岐にわたります。
・発達に関する問題を査定し、支援する
・自閉症や知的障害、LD(学習障害)、AD/HD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害に対応する
・引きこもり、不登校、虐待などの社会適応・子育てについての問題解決
このように、老若男女問わずどの世代にも対応できる力が求められます。
たしかに楽なお仕事ではありませんが、教育現場、家庭、介護・福祉施設…。あらゆる世代に対応する臨床発達心理士は、数々の働き先があります。
自分に合わせたスタイルで働くことができるのが特徴です。
臨床発達心理士と臨床心理士の違い
中には、「臨床心理士との違いが分からない」という方もいると思います。
それぞれの資格の内容は次の通りです。
臨床発達心理士は
発達心理学関係(ADHD、ひきこもり、不登校、自閉症、発達障害等)に特化した資格。
臨床心理士は
発達心理の分野を含む医療系の心の問題全般(うつ病、パニック障害、強迫神経症など)をカバーしている資格。
引用:心理カウンセラーの種
ややこしくてよくわかりませんよね。
違う点を簡単に表にしました。
臨床心理士 | 臨床発達心理士 | |
資格取得の難易度 | 指定大学院の修了が必須だが、臨床経験は不要。 | 大学院の修了は必須ではないが、発達心理学関係の大学卒業と3年以上の臨床経験が必要。 |
求人数 | 比較的多い | 臨床心理士と比べると少なめ(ただし増加傾向) |
仕事内容 | 病院の精神科や学校のスクールカウンセラーとして働くことが多い。 | 臨床心理士と同じような職種につくことが多いが、「発達」に関わる仕事のみを行うため、業務内容は限られる。 |
臨床発達心理士は「発達」に基準を置いています。発達障害や発達心理に強い関心がある方向けの資格となっています。
もっと幅広い分野で学びたい!働きたい!という方は臨床心理士をおすすめします。
実際に臨床発達心理士資格を取得し、働いている方の声です。
「子供と関わる仕事がしたいと考え、発達心理学を学びました。その後、臨床発達心理士の資格を取得し、今では児童相談所で働いています。スタッフやご家族と、年齢や立場は関係なくコミュニケーションを取れるため、今の職場にとても満足しています。ときに苦労することもありますが、やりがいのある仕事なので、これからも続けていきます。」(Yさん/女性)
https://twitter.com/hana1001ryu1013/status/935917680556523521?s=20
年齢も性格もさまざまな人と関われる仕事であることは間違いないですね。
臨床発達心理士の資格取得までの流れ
もちろん、「資格をとろう!」と思っても、もちろんすぐには取れません。
臨床発達心理士になるためには、次の三つのステップを踏む必要があります。
・受験資格を満たす
・臨床発達心理士の試験を受ける
・資格認定を受ける
これらの三点について詳しく説明していきます。
受験資格を満たす
臨床発達心理士の場合、さまざまな受験資格があるため、自分が受験資格を満たしているのかどうか、分かりにくいと思います。
基本的な受験資格は次の通りです。
臨床発達心理士の資格を申請する場合の申請タイプ・申請基準
タイプⅠ(院修了タイプ):
発達心理学隣接諸科学大学院修士課程修了者(修了見込者、博士課程(後期)在学者、博士課程修了者も含む)で、5つの指定科目(「臨床発達支援の専門性に関する科目」「臨床発達心理学の基礎に関する科目」「認知発達とその支援に関する科目」「言語発達とその支援に関する科目」「社会・情動の発達とその支援に関する科目」、以下「指定科目」と記す)の内、3つの単位を大学院または指定科目取得講習会で取得し(必ず、「臨床発達心理学の基礎に関する科目」と「臨床発達支援の専門性に関する科目」)を含むこと)、200時間以上の臨床実習経験がある。タイプⅡ現職者タイプ(タイプⅡ-1とタイプⅡ-2の2種類の申請タイプがある):
タイプⅡ-1:発達心理学隣接諸科学大学院修士課程修了者(修了見込者、博士課程(後期)在学者、博士課程修了者も含む)で、3年以上の臨床経験があり、3つの指定科目を履修している(必ず、「臨床発達心理学の基礎に関する科目」と「臨床発達支援の専門性に関する科目」)を含むこと)。タイプⅡ-2:発達心理学隣接諸科学学部4年制卒業者で、4年以上の臨床経験があり、4つの指定科目を履修している(必ず、「臨床発達心理学の基礎に関する科目」と「臨床発達支援の専門性に関する科目」)を含むこと)
タイプⅢ(研究者タイプ):
大学・研究所等の専門機関で5年以上(2005年度から)の研究勤務経歴があり、臨床発達心理学に関する5点以上の研究業績をもつ。タイプⅣ(公認心理師タイプ):
公認心理師資格を有していて、臨床発達専門講習会を受講している。
引用:JOCDP
色々とありますが、一番簡単に受験資格を得る方法は、“発達心理学隣接諸科学の大学院を修了する”ことです。特別な活動をしているわけでなければ、まずは指定大学院の修了を目指してください。
臨床発達心理学隣接諸科学の範囲は、
発達心理学、教育学、幼児教育学、障害児教育学、保育学、心理学、福祉学、社会福祉学、児童学、小児科学、老年学、医学、看護学、発達障害学、リハビリテーション学、体育心理学、保健体育学、スポーツ健康科学、人間学、応用人間科学、人間社会学、社会学、(心理学的)コミュニケーション学
となっています。
上記の名がつく学部、学科名ならば資格要件として認められる
臨床発達心理士の試験を受ける
臨床発達心理士の資格認定申請および審査は、原則として年1回のみです。そのため一度タイミングを逃してしまうと一年待つことになります。
そうならないようにするために、しっかり日程を確認しておきましょう。
試験を受ける手順は次の通りです。
・申請書類の購入
・申請手続き
・試験
・資格認定を受ける
JOCDPが実際に発表している2020年のスケジュールを参考に、それぞれ説明していきます。
申請書類の購入
販売受付期間内に臨床発達心理士認定申請ガイド(税込み2,420円)を購入し、申請準備を進めていきます。
販売受付期間:2月下旬~8月上旬
以下の3点が同封されています
・認定申請ガイド
・認定申請書類
・資格申請書類説明会のご案内(申込書)
資格申請に必要な情報がすべて記載されているため、購入必須
・前年度版認定申請ガイドを参考にすればある程度の内容が分かります。
申請手続き
期日内に認定審査料(33,220円)の払い込み、申請書類の送付をおこないます。期日に余裕をもって済ませましょう。
認定審査料払込受付期間: 8月上旬~中旬
申請書類受付期間: 8月上旬~中旬
試験
試験は、1次試験と2次試験のそれぞれに合格する必要があります。
それぞれの試験は、次のとおりです。
一次試験
試験の内容はさきほど紹介した申請の際のタイプによって変わります。
タイプⅠ 書類審査・筆記試験・臨床実習内容報告書審査
タイプⅡ 書類審査・筆記試験あるいは事例報告書審査
タイプⅢ 書類審査・業績審査
タイプⅣ 書類審査
筆記試験日: 2020年 9月下旬
結果通知: 2020年 11月中旬
試験は選択だけではなく論述もあります。試験対策として、申請ガイドに記載されている出題基準や指定科目キーワード、前年度の得点割合、問題例をチェックすることを推奨します。
二次試験
二次審査は複数の審査者による口述審査(個別面接)が実施されます。
口述試験日: 2020年 12月上旬
結果通知: 2020年 12月下旬
知識だけではなく、臨床発達心理士としての資質が問われる
資格認定を受ける
見事合格通知が届けば資格認定です!
認定発行物送付時期:2020年 2月下旬
ただし所定の手続きがあるので、舞い上がって忘れないように注意しましょう。
手続き完了後、ついに5年間の資格が認定されます!
5年後には資格の更新が行われます。研修会に参加し、規定の12ポイントの取得が必要です。
資格取得後も気を抜くことができません。日々の勉強が大切になってきます。
資格取得までにかかった費用はこのくらいです。
認定審査料:32,616円
登録料:12,150円
日本臨床発達心理士会年会費:10,000円
合計:54,766円
(5年ごと)更新審査料:20,020円
臨床発達心理士の資格はとりやすいの?難易度は?
たしかに、どれくらい合格しやすいのかは気になるところですよね。
結論として、臨床発達心理士の試験の難易度はやや高いと言われています。一次審査と二次審査を突破する必要がありますし、筆記試験を受ける場合は、タイプによって6科目受験しなければならないからです。
合格率は非公開になっていますが、2001年の設立以来、15年間で約4,000名の方が資格を取得しています。
気になる臨床発達心理士の年収は?
資格を取得するのであれば、当然気になるのはその資格を利用して、どれくらい稼ぐことができるのかですよね。
臨床発達心理士の資格を取得して、仕事をした場合の一般的な平均年収は、300万円〜500万円ほどといわれています。平均月収は28万前後です。
「あれ? 大学でみっちり勉強した上に、学費や資格取得のための費用を考えるとちょっと…」と思った方もいるかもしれません。
しかし実際のところの臨床発達心理士の年収は、働くスタイルや経験年数によって、大きく変わってきます。
常勤/非常勤か、企業で働くのか……働き先が幅広いので当然ですよね。年収が200万円を満たない人もいれば、1,000万円を超える人もいるのです。
ただ、臨床発達心理士のみで、年1,000万円越えを目指すことは難しく、現実には大学教授や医師を兼務している場合がほとんどです。
非常勤の場合
「臨床発達心理士の資格を取った!やった!」となっても、全員がすぐに常勤として働けるわけではありません。
非常勤の場合、月収ではなく時給制であることが多いです。
まずは時給1,000円から。そのあと経験や実績を積み、2,000円、3,000円、……なんと10,000円にまで跳ね上がることもあります!
そこまでいけばもう大ベテランですよね。
現実には、時給2,000円~4,000円であることが多いですが、比較的高い時給がもらえるのが学校で働くスクールカウンセラーです。
なんと平均時給は5,000円。
非常勤の方は一つの職場ではなく、掛け持ちしていることが多いので、ある程度は稼げそうですよね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
最後に臨床発達心理士についてまとめておきます。
・人と関わる仕事であり、その対象者は子供から大人までさまざま
・臨床心理士より専門的である
・資格取得まで相応の準備・勉強が必要
・年収は働き方によって大きく変わる
多様化が進む中、心理系の仕事はこれからさらに重要視されてくると思います。
臨床発達心理士の需要は高まってくるでしょう。
さらに、悩みを抱える患者さんを支援できる仕事なのでやりがいが大きい仕事です。
「誰かの力になれる仕事をしたい」「人を笑顔にしたい」と考えている方は、ぜひ臨床発達心理士の道を考えてみてはいかがでしょうか。