近年インターネットの普及により、情報処理技術者の需要も年々高まってきています。
そんな中、
「情報処理技術者の資格取得をしたいけれど、どれくらいの難易度か知りたい。」
と思っている人も多いのではないでしょうか。
これから資格を取得しようと思った際、やはり難易度など気になりますよね。
そこでこの記事では
・情報処理技術者の資格の種類
・情報処理技術者の資格の難易度
・情報処理技術者の資格の合格率
などを紹介していきます。
目次
情報処理技術者の資格の種類
情報処理技術者は、情報処理技術者として知識、技能が一定以上の水準にあることを認定するIT系で唯一の国家資格です。
IPA(情報処理推進機構)が試験を取り仕切っており、試験については以下の位置づけで試験が実施されています。
情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。
情報システムを構築・運用する「技術者」から情報システムを利用する「エンドユーザ(利用者)」まで、ITに関係するすべての人に活用いただける試験として実施しています。特定の製品やソフトウェアに関する試験ではなく、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる知識・技能について、幅広く総合的に評価しています。
引用 情報処理推進機構
情報処理技術者試験には、全部で12個の試験があります。
引用 情報処理推進機構
- ITパスポート試験(IP)
- 情報セキュリティマネジメント試験(SG)
- 基本情報技術者試験(FE)
- 応用情報技術者試験(AP)
- ITストラテジスト試験(ST)
- システムアーキテクト試験(SA)
- プロジェクトマネジャ試験(PM)
- ネットワークスペシャリスト試験(NW)
- データベーススペシャリスト試験(DB)
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
- ITサービスマネージャ試験(SM)
- システム監査技術者試験(AU)
これら、試験に合格するとそれぞれ資格が取得できます。
そんな情報処理技術者の試験ですが、各試験の難易度によって受験する人も大きく分かれています。
情報処理技術者の分類は以下の通りです。
- ITをこれから利用する人(IP、SG)
- 基本的、応用されるITスキルを求める人(FE、AP)
- 高度知識・技能を求める人
それでは、これら受験する人に分けて各試験の特徴について紹介します。
ITをこれから利用する人(IP、SG)
これからITを利用しようと考えている人は、ITパスポートもしくは情報セキュリティマネジメントを受けることが多いです。
ITパスポート(IP)は、ITに関する基礎的な知識を証明できる国家試験です。
新しい技術(AI、ビッグデータ、IoT等)や新しい開発手法に関する知識の他、経営の知識、セキュリティやネットワークなどのIT知識、プロジェクトマネジメントの知識など、幅広い分野の知識が問われます。
確かにこれだけ聞くと難しそうに感じますが、最近ではITパスポートに関する分かりやすい解説書や参考書なども多く出版されているので、未経験からでも合格できる可能性は十分あります。
https://twitter.com/NovNyanko/status/1454288577802559491
情報セキュリティマネジメント(SG)は、脅威から組織を守るためのセキュリティに関する基本的なスキルを認定する試験です。
情報セキュリティマネジメント試験では、情報セキュリティの考え方や情報セキュリティ管理の実践規範などのセキュリティに関する知識から、ネットワーク、システム監査、経営管理などの情報セキュリティに関わる重要な基礎知識が出題されます。
情報セキュリティマネジメントは、以下のように活用されています。
- 部門全体の情報セキュリティ意識を高め、組織における情報漏洩のリスクを低減する
- 万が一トラブルが発生しても、適切な事後対応によって被害を最小限に食い止める
- 情報セキュリティを確保することで、より安全で積極的なIT利活用を実現する。
基本的、応用されるITスキルを求める人(FE、AP)
基礎的なITスキルを持っており、ITスキルを深く理解していきたいという人は、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験を受けることが多いです。
基本情報技術者(FE)は、高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能を持ち合わせていることを証明する試験で、ITパスポートと違い、プログラムに関する知識が要求されるため、一気に難易度が上がります。
基本情報技術者1回落ちて2回目で受かったけどもはや難易度が”基本”じゃないんだよな
特に午後のアルゴリズムとネットワーク— U (@nullnullOL) August 11, 2021
情報処理技術者になるために必要な知識を多く吸収できるので、ITエンジニアとしてキャリアをスタートするためには、まずこの試験を受験することをおすすめします。
https://twitter.com/hassy_nz/status/1263982053827031040
応用情報技術者試験(AP)は、基本情報技術者の上位に位置づけられる試験です。
ITプログラムよりも要件定義や基本設計ような上流工程がまかされる、チームの中で中心的な役割を果たす存在を対象とする試験になります。
そのため、IT技術に関する知識やプロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査などの問題に加えて、午後の試験では記述式で情報セキュリティや情報戦略などを説明する問題となっているので、これまで以上に難しい問題となっています。
高度知識・技能を求める人
ITスキルについて高い専門性を持ち合わせ、さらに専門的に知識を深めていく、もしくはその知識を基に指導していくような人が受験しています。
しかし、試験内容は専門的で非常に幅広い知識を求められるため、難関資格としてあげられています。
さらにこの試験で特徴的なのが、四択に加えて記述形式で出題される点です。そのため、ある程度文章力も求められてきます。さらに応用情報技術者で出題される範囲が午前に出題されます。
それでは、そんな各難関資格を紹介していきます。
ITストラテジスト試験(ST)は、ITを活用して経営戦略を練る人向けの試験で、システム開発において事業戦略や事業計画の段階から参加して、経営者目線で高度な経営戦略と知識を用いてIT戦略の立案と実行を要求されます。
ITストラテジストは他のエンジニアと調べても高収入で人気の職業ですが、ITの知識の他にも経営戦略やIT戦略など非常に高いスキルを求められるため、難易度も非常に難しくなっています。
そんなITストラテジスト試験ですが、IT技術に対する深い知見であったり、それをどのように活用し経営改善が行えるかの知識が求められます。
そのため
- 経営陣に対してプレゼンをできる提案力
- 現状の業務分析と可視化をするためにヒアリング能力
- 現場を巻き込んでいくコミュニケーションスキル
などが必要な、ITコンサルタントやプロジェクトマネージャー、CIOの他、これら職種にこれから目指している人に向いているといえるでしょう。
システムアーキテクト試験(SA)は、情報システムまたは組込みシステム・IoTを利用したシステム開発の要件定義を行い、それを実現するアーキテクチャの設計の技能が求められる試験です。
情報システムにおいては開発を主導する者が対象者としています。
そのため、この試験では
- 開発工程のスキル(要件定義、基本設計、テスト、移行)
- 販売管理、財務会計などの基本的な業務知識
が求められます。
[アジャイルな皆さまへ][大喜利]
正解はどれでしょうか?※令和元年度秋期システムアーキテクト試験午後2問題より pic.twitter.com/3hqIOP5ghO
— 関 満徳@fullvirtue (@fullvirtue) October 30, 2019
試験内容から業務知識やIT知識が幅広く要求されることから、SEのようなエンジニア系の職種の人に向いていると思います。
プロジェクトマネージャ試験(PM)は、プロジェクトマネージャーとして必要な予算やスケジュール、品質管理などの知識への理解を要求される試験となっています。
この試験では
- リスクマネジメント
- コストマネジメント
- スコープマネジメント
とITスキルの他にマネジメント系のスキルを幅広く要求されます。
そのため、プロジェクトマネージャーにキャリアアップしていきたいと考えている人に向いていると言えます。
ネットワークスペシャリスト試験(NW)は、ネットワークに関係する技術を活用し、システム基盤の企画、要件定義、開発、運用保守においての技能が要求されます。
また、情報セキュリティを含むシステムへの技術支援を行えるかも求められます。
ネットワークススペシャリスト試験も他の試験と同じく、非常に高い難易度となっていますが、資格取得後には報奨金や手当を出す会社もあり、収入アップが見込める可能性もあるので、知識や経験が豊富な場合は是非取得したい資格です。
そんな試験では
1.ネットワークシステムの企画、要件定義、開発に関する知識・技能
2.ネットワークシステムの運用・保
3.ネットワーク技術、関連法規や標準
4.ネットワークサービス
5.ネットワークアプリケーション
のように、ネットワークに関係した内容を幅広くかつ深い理解まで要求されます。
そのため、ネットワークエンジニアやサーバーエンジニアなど、ネットワーク上のシステム構築を仕事とするIT系職種がキャリアアップしていく上で取得したほうが良い試験となります。
データベーススペシャリスト試験(DB)は、データベースに関する技術への深い理解が求められ、その専門家として情報システムの中心的な役割や技術支援が要求される人材になるための試験となっています。
https://twitter.com/hpeo_db/status/1437006322323628038
当然、DBに関する知識・技術も求められます。必ず押さえた方がよいポイントは以下になります。
- 概念データモデル・関係スキーマとキー
- 正規化
- SQL
- トランザクション
データベースを開発で利用するSEやデータベース管理者、インフラエンジニアは受けることをお勧めする資格であります。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)は、スマート家電や自動運転など、IoTを含む組み込みシステムにおいて、求められる機能、性能、品質、セキュリティを実現可能な組み込みエンジニアを目指す人に最適な試験です。
エンデベットシステムスペシャリスト試験の受験者には、IoTを含む組込みシステムの開発に携わっている人はもちろんのこと、企業の業務システムを含む大規模なエンタープライズ系システムなどの開発に携わっている人も多いといわれています。
エンデベットシステムスペシャリスト資格の出題範囲として、求められる大まかな知識やスキルは以下の通りです。
1.組込みシステムの機能要件把握
2.組込みシステムの設計・開発
3.組込みシステムのソフトウェア設計・製造
4.組込みシステムのハードウェア設計・製造
5.システム評価
6.保守
それぞれ、「IoT」「AI」「ビッグデータ」といった技術知識から、「OS」「知的財産権などの法律」「セキュリティ」などの広範囲にわたる問題が出題されるので、専門的で非常に難しい試験となっています。
組み込みシステムに特化した試験であることから、組み込み系のエンジニアは特に取得するのをお勧めします。
また組み込み系以外でも、IoT化が進む昨今では、今後ますます需要が高まっていくと思われるため、そのような先端技術に興味がある方も挑戦してみると良いと思います。
ITサービスマネージャ試験(SM)は、 顧客ニーズを把握し、サービスの計画立案、設計、以降、提供そして改善のための組織の活動できる人材か、また資源を指揮管理できる人材であるかを判断する試験です。
ネットワークスペシャリストみたいに偏った分野ではなく、まんべんなく出題されるため、テクノロジ系からストラテジ系まで幅広く勉強する必要があります。
また、サービスマネジメントやサービスの設計・運用・移行に関する知識も求められます。
ITサービスマネージャ試験の参考書は、ITECがお勧め。 pic.twitter.com/jUhFAXxUpe
— song_son (@song_son) August 28, 2014
そのため運用・保守を担当しているエンジニアが向いていると思います。
システム監査技術者試験(AU)は、情報処理技術者の中でも、高度の知識・技能が求められる試験の一つに数えられます。
情報システムのガバナンスやコントロールの適切性に対する補償を与えるもしくは改善のための助言を行えるかを目的としています。
そのため、情報システム監査全般の知識や計画・実施・報告の他、法規も勉強をすることが大事です。
監査人や情報システム責任者を目指す人に最適な試験です。
以上が情報処理技術者の特徴になります。
それでは次に、各試験の難易度と合格率について説明していきます。
情報技術者試験の難易度と合格率を比較
各試験の難易度と合格率は一体どれほど違うのか比較していきます。
なお、合格率は「令和3年度 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験」の統計資料を参照しています。
難易度は、ITスキル標準(ITSS)と呼ばれる指標で比較します。
ITSSとは、経済産業省が策定したIT人材に対するスキル体系のことです。
現状の保有スキルを数値化、どのスキルを強化する必要があるか、その必要なスキルの度合いをレベル分けしています。
ITSSは、以下のレベル分けで判断しています。
- レベル1
情報技術に関わる最低限必要な基礎的な知識を有するレベルです。
キャリアパスに向けて積極的なスキルの研鑽が求められます。
- レベル2
プロフェッショナルとなるために必要な基本的な知識・技能を有するレベルです。
業務では、上司やリーダーの指導の下に、要求された作業を実施します。
キャリアパス実現に向けたスキルの研鑽を継続が求められます。
- レベル3
独力で業務上の課題の発見と解決をリードできるレベルです。
プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有するレベルです。スキルの研鑽を継続することが求められます。
- レベル4
プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することで、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベルです。
社内において、プロフェッショナルとしての経験の知識化と後進育成に貢献しており、ハイレベルのプレーヤーとして認められます。スキル開発でも研鑽を継続が求められます。
引用 ITスキル標準とは?
それでは、各試験のITSSと合格率を以下の表にまとめました。
区分 | 難易度(ITSS) | 合格率(%) |
ITパスポート | レベル1 | 58.8 |
情報セキュリティマネジメント | レベル1 | 52.4 |
基本情報技術者 | レベル2 | 41.6 |
応用情報技術者 | レベル3 | 24.0 |
ITストラテジスト | レベル4 | 15.2 |
システムアーキテクト | レベル4 | 16.5 |
プロジェクトマネージャ | レベル4 | 15.1 |
ネットワークスペシャリスト | レベル4 | 12.8 |
データベース | レベル4 | 15.8 |
エンベデッドシステム | レベル4 | 16.4 |
ITサービスマネージャ | レベル4 | 15.0 |
システム監査技術者 | レベル4 | 15.3 |
ITパスポート、情報セキュリティマネジメント試験は2人に1人が合格できるレベルの試験ですので、これから情報処理技術者としての勉強を始める人でも十分合格できます。
基本情報技術者は50%を切っており、5人に2人が合格できるレベルが、応用技術者試験以降の試験は合格率が20%以下にもなっており、5人に1人が合格できるレベルの難易度となっています。
未経験はどの資格を取得するのがおすすめ?
未経験ならば、まずはITパスポートを取ることをおすすめします。
その理由としてITパスポートは基本的にITの基礎知識が出題されるため、難易度も他試験に比べて易しくなっています。
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以上のように、出題する範囲が広く専門的な知識を要するので初めは難しいと思いますが、各分野別の合格点は比較的低いため、人によっては数週間から数か月勉強すれば合格できます。
https://twitter.com/minamibloger/status/1226437530981060609?t=jB-uG9kFKp8e52o2ZdtwMw&s=19
このように、しっかり勉強すれば合格が狙えます。
また、レベル2以降の資格もITの基礎的な知識が生かされるので、最初に知識を身につけるために是非取得するとよいでしょう。
おすすめのテキストや参考書を紹介
情報技術者試験向けの参考書は色々ありますが、その中でもおすすめのテキストや参考書を
- IT初心者の人向け
- 基本的スキルを身に付けたい人向け
- より専門知識・技能を磨きたい人向け
に分けてそれぞれ紹介します。
IT初心者の人向け
いちばんやさしいITパスポート 絶対合格の教科書+出る順問題集
最近では、アプリもリリースされているのでこちらを活用しても良いでしょう。
アプリを利用すれば、電車の中など隙間時間に勉強できます。
ITパスポート 全問解説
引用 App Store
基本的スキルを身に付けたい人向け
令和03年 イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生の基本情報技術者教室 (情報処理技術者試験)
出るどこだけ!基本情報技術者[午後]
全問解説付 基本情報技術者 午前 一問一答問題集
引用 App Store
2022年度版 ニュースペックテキスト 応用情報技術者
全問解説付 応用情報技術者 午前 一問一答問題集
引用 AppStore
より専門知識・技能を磨きたい人向け
情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ 2021年版
情報処理教科書 高度試験午後Ⅱ論述 春期・秋期 第2版
2022年版 高度情報技術者午前共通問題集
以上のように、情報処理技術者試験を受ける際に役立つテキストや参考書が多くあるので、自分のスタイルに合わせて選んでください。
まとめ
今回、情報処理技術者の資格について特徴を説明し難易度、合格率の比較をしました。
比較した結果
- 一番合格しやすい資格はITパスポート
- エンジニアなら基本情報技術者まで取得できれば十分
であることが分かりました。
資格を取得すればIT知識を身につけられると共に、就職・転職にも有利になります。
取得して損はないので、是非これから試験を受ける方は参考にしてみてください。