電気主任技術者、通称「電験」は、ビルなどの建物の電気工作物の管理者として必ずいなければならない存在です。
「電験をとるのは難しいって聞くけど、どれくらい難しいの?」
「電験をとるのに、どれくらい勉強が必要?」
「電験をとったら、年収って上がるのかな。」
そのような疑問をお持ちのかたのために、ここでは
・電気主任技術者の難易度
・電気主任技術者を取得するのに必要な勉強時間
・電気主任技術者の年収
といった疑問について解説していきます。
電気主任技術者とは
電気主任技術者は、発電所や変電所、ビルや工場など、電気を扱う事業所で、電気設備の保安管理を行うことができる国家資格です。電気設備を設けている事業主は、管理者として電気主任技術者を選任することが法律で定められています。電気設備の管理や点検を怠ると、事故や火災などの原因になってしまうことがあるからですね。そのため、建物や設備がある限り必ず必要とされていて、需要が多い資格なのです。
同じ電気の国家資格として電気工事士がありますが、違いはこのようになっています。
・電気工事士・・・現場で作業に従事する資格
・電気主任技術者・・・現場の監督を行う資格
電気主任技術者は、管理者として現場での責任を持つ必要があるのです。
電気主任技術者は1種から3種まであり、次のように保安監督のできる範囲が定められています。
1種 | すべての事業用電気工作物 |
2種 | 電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
3種 | 電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物 (出力5千キロワット以上の発電所を除く) |
3種は、一般的なビルやホテルなど、多くの場所で働くことができます。大型の商業施設など、5万ボルト以上の電気を受電している施設は3種の範囲を超えてしまうため、2種以上が必要となります。
1種は制限がないため、超高圧の発電所から小さなビルまで、どんな電圧の設備でも、管理・運用することが可能です。需要が多い割に資格を持っている人が少ないため、かなり貴重な存在です。
引用 電気事業連合会
電気主任技術者の難易度
いろんな働き先があることがわかった電気主任技術者ですが、試験はどれくらい難しいのでしょうか。電気主任技術者は、1種、2種、3種ともに合格率10%以下と、かなり難易度が高いといわれています。
ここからは1種、2種、3種、それぞれの合格率や難易度について、ここ数年のデータを紹介していきます。
3種
まずは、3種です。ここ5年間の受験者数と合格者数です。
受験者数 | 合格者数(合格率) | 科目合格者数(合格率) | |
平成29年度 | 45720 | 3698 (8.1%) | 12176 (26.6%) |
平成30年度 | 42976 | 3918 (9.1%) | 12335 (28.7%) |
令和元年度 | 41543 | 3879 (9.3%) | 13318 (32.1%) |
令和2年度 | 39010 | 3836 (9.8%) | 11686 (30.0%) |
令和3年度 | 37765 | 4357 (11.5%) | 12278 (32.5%) |
合格率を見ると、どの年も大体10%前後で推移しており、かなり合格率の低い試験であることがわかります。
そして、ここで見ていただきたいのが科目合格者数です。
電験3種は、以下の4科目の試験が行われます。
・理論
・電力
・機械
・法規
そのうち1科目でも合格し、翌年と翌々年の試験で他の科目も全て合格すれば、免状を取得することができます。そのため、1回の試験で全て合格しなくても、最大3年をかけて4つの科目に合格すればよいのです。その一部の科目に合格したのが科目合格者数で、こちらは合格率約25~30%です。10人に1人しか受からない試験を一回で受けるよりは、3~4人に1人受かる試験を3回受けたほうが、その年に勉強する量も分散できるので、受かりやすくなるかもしれません。
2種
2種はどうでしょうか。
一次試験受験者数 | 一次試験合格者数(合格率) | 一次試験科目合格者数(合格率) | 二次試験受験者数 | 二次試験合格者数(合格率) | |
平成28年度 | 6521 | 1456(22.3%) | 3007(46.1%) | 2364 | 459(19.4%) |
平成29年度 | 6570 | 1737(26.4%) | 3450(52.5%) | 2435 | 329(13.5%) |
平成30年度 | 6631 | 1600(24.1%) | 3089(46.6%) | 2624 | 381(14.5%) |
令和元年度 | 6915 | 1633(23.6%) | 3388(49.0%) | 2513 | 574(22.8%) |
令和2年度 | 6235 | 1695(27.1%) | 3050(48.9%) | 2512 | 701(27.9%) |
こちらは2021年11月現在、2021年度の結果が全ては公表されていないため、2020年度(令和2年度)からまとめてあります。このようにみると、3種よりも合格率が高いように見えますが、実際は一次試験を受けた人のうち、二次試験まで合格した人の合格率はこのようになります。
合格率 | |
平成28年度 | 7.0% |
平成29年度 | 5.0% |
平成30年度 | 5.7% |
令和元年度 | 8.3% |
令和2年度 | 11.2% |
このように、一次試験から二次試験両方とも合格した人は、令和2年度では若干高かったものの、他の年度は10%以下とかなり低い合格率で、こちらも難しい試験だということがわかります。
2種の場合、一次試験で科目合格の制度があり、第三種と同じように最大3年間で4科目全てに合格すればよいとなっています。また、一次試験で合格したが、二次試験で不合格だった場合、翌年一次試験が免除され、二次試験から受験することが可能です。つまり、最大4年かけて、全ての試験に合格すれば、第二種の免状が取得できる仕組みです。
1種
では、最後に1種の合格率です。
一次試験受験者数 | 一次試験合格者数(合格率) | 一次試験科目合格者数(合格率) | 二次試験受験者数 | 二次試験合格者数(合格率) | |
平成28年度 | 1519 | 331(21.8%) | 702(46.2%) | 581 | 75(12.9%) |
平成29年度 | 1567 | 363(23.1%) | 844(53.9%) | 569 | 86(15.1%) |
平成30年度 | 1566 | 378(24.1%) | 766(48.9%) | 615 | 84(13.7%) |
令和元年度 | 1566 | 379(24.2%) | 710(45.3%) | 598 | 103(17.2%) |
令和2年度 | 1508 | 759(50.3%) | 638(42.3%) | 933 | 134(14.4%) |
1種も2種と同じように、一次試験から受けて二次試験に受かった人の合格率は次のようになっています。
合格率 | |
平成28年度 | 5.0% |
平成29年度 | 5.5% |
平成30年度 | 5.4% |
令和元年度 | 6.6% |
令和2年度 | 8.9% |
このように2種とほぼ同じか、それよりやや低めの5%前後と、こちらもかなり難易度の高い試験であることがわかります。
3種、2種に比べて受験者数も少ないですが、年間で約100人ほどしか合格していないため、貴重な存在ですね。
電気主任技術者の勉強時間
確かに科目合格の制度があるとはいえ、どれくらいの期間勉強しなくてはいけないのか、気になるところですよね。実際受けた人は1000時間ほどか、それ以上勉強したという人が多いようです。
去年、今年で電験三種受けました。 去年は自己採点で理論35、電力45、機械65、法規70で2教科合格し、今年は自己採点理論、電力ともに75でした。 電気系は全く専門外かつ、数学も全く覚えてない状態からのスタートだったのでトータル3000時間勉強しました。 最初は全然わかりませんでしたが、最後はきちんと理解でき、試験に挑むことができました。 勉強時間が全てではないですが、勉強量に比例すると思ってます。
引用 ヤフー知恵袋
勉強時間にすると100時間ほど? 正直舐めてました。重要な公式等をなんとなく覚えてる程度だとダメなことに気付きました。
引用 ヤフー知恵袋
1日何時間するかにもよると思いますよ。 知識があまりない状態からだと1000時間以上は必要と言われています。 1日3時間でも約1年です。
引用 ヤフー知恵袋
いくつか、実際に受けた人たちの感想を紹介しました。基礎知識の量にもよりますが、ほんの2~3か月勉強しただけで受かるような試験ではないようです。
科目合格を3年間でとる場合、1日1時間でも3年で約1000時間。実際はもっとやることもあるでしょうから、これ以上の時間が必要となってきます。
働きながら取得する場合などは特に時間の使い方も重要になってきますね。
例
・朝30分早く起きて勉強
・電車の中でアプリを活用して30分勉強
・昼休みに30分勉強
・夜自宅で1時間勉強
このように、隙間時間やアプリなどを使用すれば、1日の中でも2時間くらいは勉強時間が取れるかと思います。さらに休日はもう少し時間を増やせば、3年かからずに取得することも十分可能となるでしょう。
電気主任技術者の年収
ここまでで、かなり難しい試験であることがわかった電気主任技術者ですが、実際資格を持っていると、持っていない場合に比べて年収は上がるのでしょうか。
求人サイトの募集を見てみると、3種はそれほど高い年収というわけではないようですが、2種、1種と上がるにつれて年収も増えていきます。
3種の場合
・自社設備の保守・メインテナンス・・・年収450万~500万円
・電気点検スタッフ・・・年収370万~480万円
2種の場合
・電気主任技術者業務・・・年収400~800万円
・電気設備の保安、管理・・・年収500万~800万円
1種の場合
・ガス発電会社の電気主任技術者・・・年収750万~1200万円
・風力発電関連の電気主任技術者・・・年収740万~900万円
これには理由があります。電験3種は、大企業でなく、中小企業での採用が多い事です。そのため、そもそもの年収があまり高くないのと、実際管理業務以外の雑務なども多く作業者としての仕事が多いのが原因としてあげられます。
また、電気主任技術者を持っていても、実務経験がないと現場での仕事での即戦力とならないため、収入は高くならない傾向にあります。
それでも、2種、1種と難易度が上がるにつれて、年収も上昇しています。少しずつでも上の級を取得できるといいですね。
インターネットで検索すると、「電験3種 意味ない」と言ったワードが出てくることもあり、そのような疑問を持つ人もいるでしょう。
確かに3種だけではあまり年収は高くありません。しかし求人サイトで調べてみると、「定年後も働ける シニア」と言ったコメントが一緒に掲載されています。
つまり、資格を持っていることで、定年後にも働くことができ、生涯年収を増やすことができるのです。そういった理由で、電気主任技術者は、決して無駄な資格ではないのです。
まとめ
では、これまでのまとめです。
・電気主任技術者は1種から3種まで難易度が高く、簡単にすぐ取得できる資格ではない。
・電気主任技術者を取得するには、1000時間ほどの勉強が必要。
・電験1種になるほど年収は上がる。3種はそれほど年収は高くないが、定年後も有資格者として働くことができる。
以上、電気主任技術者についてお伝えしました。簡単に取れる資格ではありませんが、一生使える資格です。
ぜひ免状取得に向けて、勉強してみてください。