イラストレーターやウェブデザイナー、動画クリエイターなど、デザインや映像関連の仕事をする人にとって欠かせないツールである「アドビ(Adobe)社」のアプリケーションソフト。
クリエイティブな職種に興味があったり、デザイン関連の仕事を始めて間もなかったりする方は、アドビ社が公認している認定試験「アドビ認定プロフェッショナル」に興味をお持ちではないでしょうか。
「アドビ認定プロフェッショナルってどんな資格?」
「アドビ認定プロフェッショナルの難易度は?」
「アドビ認定プロフェッショナルの勉強法や独学で合格可能か知りたい!」
という疑問がある方へ向けて、アドビ認定プロフェッショナルの試験概要をはじめ、難易度や具体的な勉強法を解説していきます。
後半では、資格取得のメリットもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
アドビ認定プロフェッショナル試験概要
実はこの試験は、2021年6月にアドビ認定アソシエイト「Adobe Certified Associate(ACA)」からアドビ認定プロフェッショナル「Adobe Certified Professional」に名称が変更されたばかり。
それまで試験科目になかったPremiere Proが新たに追加されましたが、出題範囲に大きく変化はありません。
ここでは詳しい試験概要をご紹介しますので、受験を検討されている方は確認しておきましょう。
試験科目と受験料は以下の通りです。試験科目のリンクから、出題範囲を見ることができます。
試験科目 アプリケーション 受験料 Visual Design using Adobe
Photoshop CC 2020 Adobe Photoshop CC (一般価格)10,780円(税込)
(学割価格) 8,580円(税込Graphic Design & Illustration Using Adobe
Illustrator CC 2020 Adobe Illustrator CC Digital Video Using Adobe
Premiere Pro CC 2020 Adobe Premiere Pro CC
詳しい試験の概要はこちら
受験資格 | なし |
試験会場 | 全国の試験会場 |
試験形態 | CBT形式(コンピューター上で実施される試験) |
試験時間 | 50分 |
出題数 | 30問前後 |
出題形式 | 4択問題と操作問題 |
合格基準 | 700点以上(1000点満点) |
試験当日の持ち物 | 受験者のIDとパスワード、受験票、写真付き身分証、学生証(学割申込者) |
試験結果 | 試験終了直後に確認可能 合格証はデジタル認定証 |
※同じ科目の受験が2回目、3回目の場合は前回の受験からそれぞれ24時間、120時間待たなければなりません。
またその他、試験で注意する点が、試験は基本的にWindowsで行われることと、操作問題でショートカットキーが使用できないことです。
デザインや映像関連のお仕事をされている方は、Macユーザーが多いと思います。操作がそこまで変わるわけではありませんが、一応頭に入れておきましょう。
そして、作業短縮のためにショートカットキーもよく使われると思いますが、こちらも試験中は使用できないので気を付けてください。
問題数が少ないように思えますが、実際に受験すると40問前後あったように感じたという方や、試験時間がギリギリだったという方もいらっしゃたので、しっかり対策をして試験に臨みましょう。
アドビ認定プロフェッショナルの難易度
資格の勉強をする前に、気になるのは合格率や難易度ですが、残念ながらアドビ認定プロフェッショナルの試験合格率は非公開です。
情報が少ないため、私の経験を踏まえた考察になりますが、難易度は経験値によって以下のように大きく変わると考えられます。
・アドビのアプリケーションソフト初心者→難易度高め
・アドビのアプリケーションソフトを扱ったことがある人→難易度普通
・アドビのアプリケーションソフトを頻繁に使う人→難易度低め
アドビのアプリケーションソフト初心者
まず、アドビ認定プロフェッショナルの試験について、公式サイトで次のように記されています。
アドビ認定プロフェッショナルは、アドビが認定するエントリーレベルの認定資格です。試験科目はアドビのソフトウェア製品ごとに構成されます。出題形式は、選択肢から正しい解答を選ぶ選択式問題とソフトウェアを実際に操作する操作問題があります。
ここに書いてあるエントリーレベルとは、初級レベルという意味です。
では、初心者でも簡単に受かるのかと言われると、決してそうではありません。
私が初めてPhotoshopとIllustratorを扱ったのは高校生の時で、学校の授業で操作を覚えたのですが、同じ授業を受けていてもパソコン操作が苦手な人は慣れるまで時間がかかっていたようです。
一方、パソコン操作やデジタル加工の基本が分かっている人は、少しの練習は必要でしたが、ある程度使えるようになっていました。
また、アドビ認定プロフェッショナルの試験概要から出題範囲を見てみたのですが、試験では画像処理や編集の基礎知識、アプリケーションの基本操作が分からないと、出題範囲の単語を理解することも難しいと考えられます。
このことから、パソコン操作と画像加工が苦手な人や、アドビソフト初心者にとっては、時間をかけて勉強しなければ合格は厳しいと言えるでしょう。
アドビのアプリケーションソフトを扱ったことがある人
では、アドビのアプリケーションソフトを扱ったことがある人にとってはどうでしょうか。
私は、高校と専門学校でPhotoshopとIllustratorを使いデザイン画やポスター作成をしていました。とはいっても、学校の授業や放課後で使う程度ですから、ツールをすべて使ったことはありませんし、そもそも昔のことなので使い方を忘れている可能性大です。
アドビソフトの使用経験はあっても、使いこなせてはいないレベルの私が、アドビ認定プロフェッショナルのサンプル問題に挑戦しました。
4択問題なので勘で解くことは避け、分からない場合は不正解ということで解いてみた結果は、PhotoshopとIllustratorどちらも10問中6問正解でした。
配点にもよりますが、合格基準は7割なのでこのままだと不合格でしょう(笑)
初見の単語や、忘れてしまっていたこともありましたが、正解した問題は難なく解けたので、きちんと勉強しなおせば合格の可能性はあると考えました。
実際にアドビのアプリケーションソフトを使用したことがあれば、ある程度知識はあると思います。とはいえ試験となれば、使ったことのない機能も理解しなければなりません。
経験があるからといって油断せずに復習を含めて出題範囲をしっかり勉強して試験に臨めば、合格可能と考えられます。
アドビのアプリケーションソフトを頻繁に使う人
最後に、アドビのアプリケーショソフトを頻繁に使用している人についてです。
使用用途にもよりますが、仕事でバリバリ使っている、または趣味などで様々な機能を使ったことがあるならば、試験対策の本で出題範囲をおさらいするくらいで十分合格できるでしょう。
仕事などで使用経験ありの方で、わずか1日の勉強で合格できたケースがあります。余裕をもって1週間も勉強すれば確実です。
また、アドビ認定プロフェッショナルは、1000点満点のうち、700点が合格ラインなのですが、普段「デザイナー」兼「モーションエディター」として仕事されている方が、983点という高得点で合格していました。
アドビ認定プロフェッショナル試験Photoshop (#ACP)
合格しましたー👑わーい久しぶりに緊張した
得点983点だったんだけど、一体何を間違えた…悔しい… pic.twitter.com/AQ5wPy6eq2
— sakamoto (@ysys_art) August 21, 2021
使用の頻度は個人差があるかと思いますが、勉強次第では高得点が狙えるということになります。
このことから、ソフトの使用経験がある方については、アドビ認定プロフェッショナルの合格は難しくないと考えられます。
このように、受験する人が持つ知識やソフトの使用経験によって難易度は変わってくるのですが、あくまでもエントリーレベルの試験。基本を押さえつつ、試験対策の勉強をきちんとすれば合格できるので、総合した難易度は中級程度と言えるでしょう。
アドビ認定プロフェッショナルの勉強法
きちんと試験対策をすれば合格の可能性は大いにあるということで、どのような勉強法があるのか知っておきたいところですね。
先に申し上げておきますが、多少経験があればアドビ認定プロフェッショナルは独学でも合格できます。
もちろん全くの未経験や、独学が不安な方もいらっしゃると思いますので、ここでは独学を含めて、アドビ認定プロフェッショナルの具体的な勉強法を紹介していきます。
自分に合うと感じた勉強法があれば、ぜひ試してみてください。
独学で勉強する
アドビ認定プロフェッショナルは対策教材が充実しており、多少経験のある人ならば独学でも勉強しやすい試験です。
「Photoshop」「Illustrator」「Premiere Pro」それぞれの主な対策教材をご紹介します。
Photoshop CC 2020
ACA アドビ認定アソシエイト対応 Photoshop CC 試験対策
引用:Amazon
販売価格:2,200円
すでに終了したアドビ認定アソシエイトPhotoshop CC試験に対応した公式テキストですが、現在のPhotoshop CC 2020試験対策の教材としても問題なく活用できます。
ACA Photoshop CC 模擬テスト&演習問題
引用:アオテンストア
販売価格:1,650円
選択問題に対応した模擬テストと、専用ページからダウンロードできる操作問題の演習がそれぞれ3回分利用可能です。
上記2つの対策教材はPhotoshop CC 2020試験専用ではない為、相違点や差分があります。それに関してはテキスト差分解説を確認しながら勉強しましょう。
Illustrator CC 2020
ACA アドビ認定アソシエイト対応 Illustrator CC 試験対策
引用:Amazon
販売価格:2,640円
全くの初心者というよりは、少し経験がある人のほうが内容を理解できるものとなっています。限られた勉強時間で、各章の「まとめ部分」のみを繰り返し解くことで合格したという声もありました。
ACA Illustrator CC 模擬テスト&演習問題
引用:アオテンストア
販売価格:1,650円
Photoshopの教材と同じく、選択問題に対応した模擬テストと、専用ページからダウンロードできる操作問題の演習がそれぞれ3回分利用可能です。
こちらの2つもPhotoshopと同様、以前の試験であるアドビ認定アソシエイト対応なので、テキスト差分解説の確認が必要になります。
Premiere Pro CC 2020
Premiere Proについてですが、こちらは試験対策の本は今のところありませんので、入門本を活用して勉強しましょう。
プロの手本でセンスよく! Premiere Pro誰でも入門
引用:Amazon
販売価格:2,970円
学習用のサンプルデータや、商用としても使える「レガシータイトルのスタイル&テロップモーション」のデータプレゼントがあり、初心者にとっては充実した内容になっています。
改訂2版 知識ゼロからはじめるPremiere Proの教科書
引用:Amazon
販売価格:2,948円(紙媒体) 2,680円(電子書籍)
こちらも初心者向けの入門本。初めてPremiere Proを扱う人にとっても分かりやすい内容です。オリジナルのMOGRT(モーショングラフィックステンプレート)特典がついており、簡単にかわいいムービーが作れると好評でした。
ただ上記2冊はあくまでも、基本の操作や編集作業の教本となっており、アドビ認定プロフェッショナルの試験範囲をすべて網羅しているものではありません。
Premiere Proの使い方は、個人のブログやYouTubeでも紹介されているので、出題範囲で分からない部分があれば、必ず調べて理解しておきましょう。
こちらは、アドビが無償で提供する学習コンテンツです。初級と中級以上に分かれて解説してあるので、自分のレベルに合わせて、分からないことを調べるのに利用してみてください。
アドビ認定プロフェッショナルに限ったことではありませんが独学で学ぶ場合は、
出題範囲を確認→サンプル問題や模擬試験を解く→分かっていない部分を対策本や動画等で調べる→理解できるまでとにかく手を動かす。
この流れで徹底的に対策しましょう。
学校で勉強する
アドビ認定プロフェッショナルの取得を目指している方の中には、学生さんもいらっしゃるでしょう。
独学で勉強するとどうしても理解できない部分が出てきたり、教材を新たに揃えるのにお金が掛かったりと、何かと不便なことが出てきます。
デザインや映像関連の学校に在籍しているとしたら、設備のパソコンにアドビのソフトが入っている可能性が高いです。
学校には教えてくださる先生がいて、本来有料のソフトも学校に在籍していれば無料で使えますので、質のいい勉強をするには最も適した環境ですね。
私も、初めてPhotoshopとIllustratorを学んだのは学校で、基本操作はもちろん、制作物によって必要な応用技術まで教わることができました。検定などは受けませんでしたが、正直あの時勉強して資格取得しておけばよかったと後悔しております。
というのも、アドビ認定プロフェッショナルは、学割価格で試験を受けることができるので、学生さんにとってはまたとないチャンス。
資格に向けた勉強が無料でできて、なおかつ試験も割引で受けられる。学生という特権を大いに利用しましょう。
対策講座を利用する
未経験で、学校に在籍していない社会人の方は、対策講座の利用がおすすめです。
パソコンスクールが行っている試験対策の講座なら、アドビ認定プロフェッショナル合格へ向けたアドバイスも含めて、アプリケーションソフトの操作を基礎から学ぶことができます。
Photoshop、Illustratorに対応
一科目 テキスト代含む受講料:52,800円(受験料は別途)
3時間×5回の合計15時間で、基本操作から仕事でも役に立つ機能を習得していきます。試験で実際に使用されるWindowsで模擬試験対策ができることが魅力です。
Photoshop、Illustratorに対応
一科目 入学金、教材含む受講料:64,900円
全国のエリアにスクールを構えているので、お住いの近くで講座を受講することができます。入学特典としてAdobe CCを特別価格で利用できるのも魅力です。
ちなみに、最近始まった科目であるPremiere Pro CC 2020の試験対策講座を実施しているスクールは今のところ見当たりません。
試験ではなくアプリケーションを学ぶ内容であれば、先ほどのWinスクールにも講座があるので、独学が不安な方はチェックしてみてください。
入学金、教材含む受講料:143,000円
他にも対策講座を行っているスクールがありますが、どの講座も数万円から料金がかかります。ですがその分、試験対策として先生から直接教わることのできる貴重な機会になりますので、お金と時間に余裕のある方はぜひ受講を検討してください。
ここまで、いくつか勉強法を紹介してきましたが、個人的なおすすめは独学です。実力に合わせて自分のペースで対策できるため、一番ストレスもなく、コストもそこまでかかりません。
自分に合った勉強法を探し、必要があれば、習得したい知識や技術を惜しみなく教えてくれる学校や講座も有効利用して、合格に向けた対策を行ってください。
アドビ認定プロフェッショナル取得のメリット
頑張って取得した資格によって、今後の就活や業務に何かしら役立てることができれば嬉しいですね。
アドビ認定プロフェッショナルの取得によって得られるメリットとして、公式サイトに以下の6つが挙げられています。
・デザインに不可欠であるアドビソフトの基本的なスキルが身につく
・ツールを使いこなせることで制作の効率、スピードUPになる
・クリエイティブな現場で使われる共通の知識を習得できる
・ビジュアル表現で伝える力がUPし、情報を効果的に伝えることができる
・世界中で使用されているアドビの認定資格は、国外でも通用する
・就職や転職において、職場でも実際に使用されるアドビソフトのスキルを証明できる
職場で画像を用いた業務内容があれば、必ずと言っていいほどアドビのアプリケーションソフトが使用されています。
アドビのソフトを全く使えない、または個人利用で少し触れている程度よりも、基本スキルを持っている「アドビ認定プロフェッショナル取得者」のほうが、即戦力になりますよね。
基本的な使い方を習得していれば確実に作業効率が上がります。作業効率が上がれば、考えることに時間を割くことができますし、思い描いたデザインの具現化方法が分かっているので、よりデザインの幅を広げることにつながるのです。
日本だけでなく世界中で利用されているソフトのスキルがあることは、海外での仕事においてもプラスになるでしょう。
正直クリエイティブな業界では、持っている経歴、資格などあまり重視されていない傾向がありますが、スキルの証明が無駄になることはありません。
就活や転職での評価につながらなくても、アドビ認定プロフェッショナルを取得していることによって自信がつきます。持っているスキルを活かしより良い仕事ができることで、昇進や昇給につながるのではないでしょうか。
まとめ
これまで、アドビ認定プロフェッショナルの難易度や勉強法、取得のメリットについて解説してきましたが、まとめると、
・アドビ認定プロフェッショナルの難易度は、受ける人の経験値によるが総合すると中級程度
・アドビ認定プロフェッショナルは独学で合格可能
・アドビのアプリケーションソフト未経験の場合は、学校や対策講座で学ぶほうが確実
・アドビ認定プロフェッショナル取得は、世界を視野に入れたスキルアップに効果的
ということになります。
アドビ認定プロフェッショナルに合格するための勉強過程で、それまで知らなかった知識や技術を身につけることで、仕事や制作活動にいい影響を与えるでしょう。
こらからデザインや映像業界で働きたい方、または既に働いていてスキルアップしたい方にとって、アドビ認定プロフェッショナルは目指して損はない資格と言えます。
受験に悩んでいる方は、思い切ってチャレンジしてみてください。