「日本漢字能力検定」通称「漢検」といえば、私たち日本人の日常生活において欠かせない「漢字」の能力を測ることのできる検定です。
進学に有利に働くこともあるので、3級~1級を取得して履歴書に書いた経験をお持ちの方もいるかもしれません。小学校などでも団体受検を実施しているところが多く、これからお子さんが初めて漢検10級に挑戦するという家庭もあるのではないでしょうか。
「漢検10級のレベルは何年生向けで、難易度はどれくらい?」
「そもそも10級を取得するメリットはある?」
「漢検10級のおすすめの勉強法を知りたい」
という方のために、漢検10級のレベルをはじめ、難易度や受検のメリット、合格に向けた勉強法を解説します。後半では、受検が不安なお子さんのためにできることもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
漢検10級は何年生向け?
漢検の受検世代は幅広く、漢字を覚え始めた幼児から社会人の方まで、年間250万人近くが受けています。級によって年齢制限はありませんので、自分のレベルに合った級を自由に選んで受検しましょう。
各級のレベルは出題範囲によって変わってきますが、漢検10級は小学1年生で習う漢字80字が範囲で、レベルは小学校1年生修了程度となります。
その次の9級は小学2年生(240文字)、8級は小学3年生(440字)というように級が上がるほど範囲の漢字数がどんどん増えていき、それに合わせてレベルも上がっていきます。
小学校1年生で習う漢字を理解していて、なおかつ問題文を読むことができれば漢検10級に挑戦できます。10級を実際に受検する人は小学1年生や2年生が多く、早くて3歳で受ける人もいるようです。
漢検10級が一番レベルの低い級なのですが、学校で1年かけて習う漢字すべてが範囲になるので、まだ幼い子にとっては必ずしも簡単というわけではないでしょう。
漢検10級の採点基準は以下の通り
《読むことと書くこと》
小学校学年別漢字配当表の第1学年の学習漢字を読み、書くことができる。《筆順》
点画の長短、接し方や交わり方、筆順および総画数を理解している。
引用:日本漢字能力検定
合格のためには、読みと書きに加えて漢字の形や筆順までしっかりと理解していることが重要のようです。
乱雑な文字は正解と判定されない場合もあるので、きれいに字を書くことが苦手という方は、意識して丁寧に書く練習も必要になってきます。
漢検10級の難易度は低い
漢検10級をお子さんが受検するにあたって、気になるのはその難易度ではないでしょうか。
漢検10級~8級は150点満点で、80%が合格ライン。つまり120点とることができれば合格できます。
10級は毎回合格率95%前後で難易度は低いと言えますが、油断は禁物。
習った漢字を、日常生活の中でも使っていれば読み書きは自然に覚えて、間違いにも気付きづくものです。しかし筆順や画数についてはどうでしょうか。
例えば、「右」と「左」という漢字の1画目。
「右」の1画目は「はらい」
「左」の1画目は「横線」
が正解なのですが、恥ずかしながら私はこれををずっと逆に覚えていて、高校生の時に黒板に偶然「左右」という文字を書いていた際に、それを見ていた国語の先生に指摘されて気づきました。
「右」「左」どちらも小学校1年生で習う漢字、つまり漢検10級の範囲になっていますが、簡単な漢字でも1度間違えて覚えてしまうとなかなか気づけないのです。
誰にでも間違いは少なからずあると思いますが、普段から筆順に気を付けて漢字を書くことでミスを減らすことはできます。
受検の前にはしっかりと勉強をして範囲を完璧にマスターし、どうせなら満点を目指すというのもありかもしれません。
漢検では、満点で合格した方のみ満点合格証書という特別な合格証がもらえます。ただ合格するよりも達成感がありますので、ぜひ目指してみてください。
意外とある!漢検10級を受けるメリット
漢検10級~4級は正直、就職や進学の履歴書に書けるレベルではありません。
履歴書に書けないのなら、わざわざ受検料を払って受ける必要があるのかと疑問に思うのではないでしょうか。
確かに漢検は進路に直接影響する可能性が低いですが、受検するメリットはちゃんとあります。
漢検10級を受けるメリットは以下の3つです。
・漢字の基礎が身につく
・初めて「試験」という場を経験できる
・難易度が低く、努力が成功につながりやすい
漢字の基礎が身につく
漢検10級に向けて勉強することで、日常生活で当たり前に使う漢字を正しく身につけることができます。
一から千までの漢数字、上下左右の方向、曜日の漢字など身の回りでもよく見るものや、「口」「王」「山」「糸」など2年生以降で習う漢字の部首になっているものも出てきます。
この先もずっと使い続ける漢字ですから、正しい読み方や書き方、筆順などを身につけて損はないですよね。
加えて、部首になる基本の漢字の形が分かっていれば、2年生以降で難しい漢字が出てきたとしても、知っている形をパズル感覚で組み合わせて覚えられることもあるのです。
漢字を一通り勉強した大人であっても、理解をより深めるために改めて基礎を勉強しなおす機会になります。
漢字は日本で生活をするうえで欠かせないもの。漢検10級は子どもだけでなく大人にとっても、日本語の基礎を培うことができる素晴らしい検定です。
初めての「試験」という場を経験できる
大半は幼児~小学2年生くらいで受検するので、試験自体が初めての経験という人が多いはず。
中学生や高校生になっても、大切な試験でどうしても緊張して実力が出せないという人がいるなかで、幼いころから試験という場に慣れることは大きなメリットになるでしょう。
学校において、教室でみんなとテストを受ける機会はいくらでもありますが、「慣れない場所で試験」「合否が出る試験」という、いつもより緊張度の高い経験をしておくことはとても重要です。
漢検8級~10級は試験時間40分で、基本的に退出はできません。
1人で長時間座って静かに問題を解くことは、特に幼児にとってかなり高いハードルです。
漢検10級に向けた勉強をし、当日は緊張感の中1人で問題を解き、試験が終わるまで静かに座っている。合否に関係なく、この流れを乗り越えられるということ自体が、子どもにとっては大きな成長のきっかけになるでしょう。
難易度が低く、努力が成功につながりやすい
子どもが幼いうちに、頑張った分だけ結果が出るという気持ちを持たせたい親御さんもいるでしょう。検定に合格したことで「次も頑張ろう。」「もっと勉強しよう。」と、勉強に対する意欲が向上しやすくなります。
どんなに簡単な検定だとしても、合格すれば達成感が得られますよね。
漢検10級は基礎中の基礎であり、合格率95%前後と難易度は低いため、普段からしっかりと勉強していれば必ず合格できます。
また、10級に受かれば9級、8級…と段階を踏んで上の級を目指すことになるかもしれません。
その際、これまで学習した漢字が範囲に含まれてくるので、後の漢検でもおのずと合格の確率が上ります。
これまでの頑張りが実を結ぶことで、「努力」の大切さを知ることができるでしょう。
漢検10級におすすめの勉強法は?
特に自主学習をせずとも合格できる人はいますが、確実に合格するためには自宅での勉強も欠かせません。
漢検の受検をきっかけに自分に合った勉強法が見つかると、他の勉強も効率よく進められる可能性があります。
ここからは、自主学習に活用できるドリルや、その他の勉強法をいくつか紹介していきます。
学習ドリル・問題集
学習ドリルや問題集は手軽に書店で手に入り、読み書きと筆順をバランスよく勉強できるものが多いです。漢検の実際の試験でも紙に漢字を書くことになるので、一番実践に近い勉強法になるでしょう。
「いちまるとはじめよう!わくわく漢検10級」
まずは、勉強に慣れていない幼児からでも、普段の学習に活用できるドリル。
引用:いちまるスペシャルサイト
1日10分を1カ月という短い勉強時間が特徴の学習ドリルです。
クイズや迷路で遊びながら、勉強が苦手なお子さんでも無理なく楽しく学べるものになっています。
「漢検10級 過去問題集 2021年度版」
こちらは検定本番の直前に、練習問題として活用するのがおすすめです。
引用:Amazon
2020年度に実施された問題13回分が収録されており、漢検受検にまつわる注意や疑問をまとめたQ&Aなどもあります。
別冊で模範解答がついているので、答え合わせの際に便利です。
タブレット学習
最近では幼い子でもスマホやタブレットなどを使いこなしており、タブレットでの学習が一般的になっています。全教科をまんべんなく勉強でき、大人がついていなくても1人で学習を進められるので、忙しい家庭にはぴったりの勉強法です。
「スマイルゼミ」
引用:スマイルゼミ 公式サイト
スマイルゼミは月額3,278円~で、5教科に加えて漢検ドリルと計算ドリルまでついており、漢検は10級~2級に対応しています。
条件を満たせば漢検が無料で受検できるキャンペーンが、定期的に実施されているのでかなりお得。
我が家でも年中の息子がスマイルゼミの幼児コースを受講していますが、毎日15分ほどコツコツと飽きずに楽しく続けています。
「紙に書く」という実践的な部分は弱いですが、文字の形や読みを覚えるという点では重宝すると思います。
アプリ学習
タブレット学習は気になるけど、そこまでお金をかけたくないという方には、スマホのアプリがぴったりです。
「いちまると旅しよう!しりもじ漢検」
こちらは、漢検10級~5級(小1~小6)の範囲が出題されるゲームアプリです。
級ごとにステージが分かれており、ステージ内でも難易度を選んで遊べます。書取問題は正しい筆順で書かなければ不正解になるなど、細かい採点もされているようです。
アプリの問題は実際の出題形式とは異なるので、過去問ほど実践的な勉強法ではありませんが、広告表示ありだと無料で使えるのがありがたいですね。
ゲームなのでお子さんも楽しんで取り組める勉強法ではないでしょうか。
読書
学習ドリルもタブレットもやりたがらない、または学習時間以外でも漢字に慣れていきたいお子さんもいらっしゃるかと思います。ストーリーを楽しみながら漢字に触れることができる読書は、ただ漢字を書き、問題を解いて学習するよりも頭に入りやすいです。
机に向かう学習が苦手でも、寝る前や移動時間に本を開くことは簡単ですし、空き時間に効率よく勉強できるでしょう。
好きな本や漫画なども活用できますが、漢検10級の勉強におすすめの本があります。
「楽しく読んでスラスラおぼえる1年生の漢字童話 コンとこんきち (学年別漢字童話シリーズ1)」
童話の中で、1年生で習う漢字が自然に使われています。
引用:Amazon
子どもが童話を楽しみながら学べるというのがポイントなので、勉強嫌いの子でも、漢字に興味を持つきっかけになるのではないでしょうか。
このように、漢検の勉強法には様々なものがあります。
個人的には、学習ドリルやタブレット学習で普段から漢字を身につけ、検定直前は過去問などの問題をどんどんこなすという勉強法がおすすめです。
ですが、全てのお子さんにぴったりの勉強法はありません。一つの方法にとらわれずに色々と試して、お子さんに合った勉強法を一緒に探してあげましょう。
漢検10級の申し込み、受検方法
漢検を受検しようと決めたらまず申し込みが必要になります。
団体受検では所属する団体の案内を通して申し込み、会場は学校などの準会場になります。個人受検の場合は、インターネットやコンビニから自分で申し込み、受検票で指定された場所が会場となります。
漢検10級の受検概要は以下の通り。
検定日程 | 6月、10月、2月 年度内に3回実施 | |
検定時間 | 11:50~12:30(40分) | |
検定料 | 1,500円 | |
受験会場 | 全国主要都市(団体受検の場合は学校などの準会場)で実施、詳細は受検票に記載 | |
申込み方法 | インターネット(公式サイト)やコンビニから 個人受検の申込み方法 | |
準備物 | 受検票、鉛筆またはシャープペンシル(HB・B・2B)、消しゴム | |
合否結果 | 受検日から30日後にwebで公開、自宅に届くのは40日後 |
申し込みは、受検当日の約2カ月前から可能です。
漢検当日の流れや、準備物、注意事項の詳細は以下をご確認ください。
特に初めて受検される方は、検定当日にお子さんが慌てないように、受検の流れや準備物も把握しておきましょう。
子どもが1人で受検するのが不安
漢検は基本的に付き添いが不可です。小学生なら1人で受検会場に入ることに心配ありませんが、未就学児は少し不安ですよね。
もし親が一緒についていれば頑張れそうという場合は、親も一緒に受検することも検討してみてください。
漢検は申し込みの際に電話番号と希望受検地が一致していれば、自動的に同じ会場になります。席が近くになるところまでは保証できませんが、同じ室内に親御さんがいるだけで十分安心できるでしょう。
大人が幼児や小学生に混ざって受検をするのは、少々恥ずかしい気持ちになるかもしれませんが、在日外国人やとりあえず10級から取りたい人など、意外と大人も受検しているので気にすることはありません。
親御さんと一緒に漢検に挑戦することで競争心が芽生え、勉強の意欲も向上するのではないでしょうか。
ちなみに、受検日や級に関わらず、漢検を家族で受検し合格した場合、個人の合格証に加えて「家族合格表彰状」というものを申請できます。
みんなで一つの目標に向かって努力をし、合格という達成感も分かち合えるのは、家族にとっていい思い出にもなるでしょう。
まとめ
これまで、漢検10級のレベルや難易度、勉強法について解説してきましたが、まとめると
・漢検10級は小学校1年生修了レベル
・漢検10級の難易度は低く、合格しやすいので満点を目指せる。
・漢検10級の受検には、基礎固めや初めての試験経験としてのメリットがある。
・漢検10級の勉強法は、学習ドリルやタブレット学習、読書などいろいろあるので自分に合った勉強法を見つけよう。
・親子で受検も可能。家族で合格を目指すのもあり。
ということになります。
今まさに子どもが勉強中だけど、身につかなくて悩んでいる方もいるかもしれません。ですが、そんな時は焦って無理やり勉強させるということは避けてください。
学習ドリルで行き詰まったら、ゲームアプリに切り替えたり、好きな本や漫画で気分転換したり。もしくは思い切って勉強から離れてみるのもいいと思います。
漢検合格はあくまでも通過点であり、それまでの過程で漢字を好きになったり、自分に合った勉強法を見つけて習慣にできたりするということが大切なのです。決して無理強いせず、自分のペースで漢字が学べるようにサポートしてあげましょう。
世の中には様々な検定試験がありますが、漢検は小さい子から大人まで関係なく実力を試せる検定です。もしお子さんが漢字に興味を持ち始めたら、ぜひ漢検10級の受検を検討してみてはいかがでしょうか。